君に痛み分け | ナノ
「お先ー」
「気ィ付けて帰れよ」
「夕焼けが美しい!」
「明日休みだっけ」
「テルミさんは?」
「会議」
「上官様って大変だねー。じゃ、がんばって」
「大佐になりてー」
「無理無理」
「早く帰れ」
「はーい」

これが日常なんだ。結構普通に過ごしている。会話なんて内容が無くて、それでもなんとなく悪い気はしない。
テルミさんとはたまにご飯を食べに行った。割り勘と思えば大体テルミさんが大人の余裕を見せ付けてきてくれて、でも距離感は一定で何も変わらない。縮めたいとかはわたしもテルミさんも少しも思っていないんだろう。ビジネスライクなお付き合いとか言ったのも間違ってはいなかった。

「何も変わんない」

帰って着替えたらお酒でも飲みに行こう。翌日が休みだと思うと何だって出来る気がしつつ、何もしないんだろうなあと虚しくなった。働いている身なんてそんなもんだ。
だからせめてお酒は飲みに行こう。シャワーを浴びて、化粧をし直して、所要時間の短さは女としての自覚の無さの現れだ。
繁華街には色々な人がいるけれど、緑色なんて服以外では見かけなかった。わたしはこんなところに来てまで何を考えているんだろうか。

「とりあえずビールお願いします」

洒落たグラスと瓶と栓抜きが届いたところで、そういえば一人でお酒を飲むのなんて初めてだったことを思い出した。突発的なところは誰かの影響かもしれない。
アルコールが入ると思考回路が緩んでくる。こんなにお酒弱かったっけ。
結局すぐに帰った。いくつになっても大人になれない。

「夜道には気を付けて下さい」


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -