君に痛み分け | ナノ
「うわー……嫌な夢見た」

 ハッとした。ハザマさんとの思い出が嫌な夢だなんて、わたしも薄情になったものである。あれだけよくしてもらって、その気持ちが返ってこないばっかりに、まるで当てつけだ。
 外はまだ暗かった。あの不気味な鳴き声にはまだまだ時間がある。

「眠れない」

 久し振りの夢見は最悪だった。見なかったら見なかったで寝た気はしないけれど、いざ見てみると疲れが取れない。眠りが浅いからこうなるんだとは知っている。昨日は休日だったからそれも頷けた。

「眠れねー」

 けれど嫌という程ハザマさんの姿を見て、その時の気持ちを鮮明に思い出して、何故か心はスッキリしていた。薄情になったとはこの意味でもある。たかだか夢で、今までのもやもやは少なくとも今までよりは晴れていた。
 全く気にならないと言ったら嘘になるし、でもいつまでも引きずっているわけにはいかないのだ。いつまでそうしているおつもりですか、なんてどの口が言えたものなんだと悪態さえ出てくる。

「自分だって人のこと惑わすくせに」
「ばーか」
「あー、なんかかっこつかない」
「ばーか」
「ばーか」

 こんな気持ちになっていいのは恋人の特権の筈なんだ。わたしはハザマさんの何にもなれなかった。だったらテルミさんの部下になればいい。優秀な部下にはとてもなれそうにないから、今まで通りの普通の補佐官でいればいいのだ。人数合わせの雑用係なんて楽したがりのわたしにはお似合いだ。

「わたしのばーか」

「少しは私を忘れなさい」


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