汝、隣人を愛せよ。 | ナノ

教典( 大きな間違い )

隣の席の彼はわたしの部署の先輩だとかそういうことは無く、たまさか席が足りないものだからソコにいただけだった。体調の悪そうな顔の半分をマスクで隠して、横目にディスプレイを覗くと見たこともないような数字を相手に聞いたこともない関数を叩いている。結構電話が掛かって来るものだから、いつもブルートゥースのイヤホンで耳を塞いでいた。電話口で彼は、声だけ上機嫌にしてみせるけれど決まって目線が死んでいた。
コーヒーと紅茶、どちらが良いですか。彼は時折わたし達にお茶とお菓子を振舞ってくれる。重い荷物は持ってくれるし難しい関数エラーもすぐに直してしまうのだ。
喫煙所に消えていく癖に、帰った頃にはバニラの香りを漂わせる彼のことは若干ならざるぐらい気になっていたけれど、何か後ろ暗い雰囲気が付き纏っているものだから喋舌ったことは一度も無い。



汝、隣人をせよ。


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