短編 | ナノ

嘘が死んだ

 馬鹿馬鹿しいなあって思うのは勝手な話で、わたしはいじめられることになれてしまった。馬鹿馬鹿しいなあ、本当、全部嘘だったらいいのに。生ごみと混じった私物を回収して、結局捨ててしまうから一緒だと感じている。



 ウィザード・イズ・デッド


ハザマさんハザマさん、わたしを助けてくださいませんか。それとも猫に対する愛情が無いのと同じでわたしのことなんて見てもくれておりませんか。
わたしの上司は素敵な人です。顔なんてかっこよくて、性格なんて悪くて、わたしのことを虫でも見るような目で追いかけてくださるのです。

「ハザマさああん」
「寄らないでください」
「好きなくせに」
「そうですけど近寄らないでください」

でも本当は嘘なのです。わたしが好きなのはハザマさんでなくてテルミさんなのです。テルミさんはハザマさんよりひどい人です。ばっかみたい、売れないバンドマンを肥やしている貢ぎ女みたいだ。

「ハザマさああん」
「はいはい、今夜セックスしましょうね。だから離れてください」
「うそつき! すぐに寝る癖に」
「うわーバレてましたか。参った参った」
「ハザマさん、そろそろ会食の時間ですよ」
「恥ずかしい部下を持ちました」

ハザマさんとセックスすることは嫌いでは無い。むしろ好きな方で、それを認識する度に汚い大人になったなあと考えている。馬鹿みたい、本当はテルミさんがいいのに、わたしは妥協している。

数匹の猫が横切ってハザマさんは眉間に皺を寄せた。ティッシュを構えるもクシャミには至らなかったようでした。わたしはいつも空回りをしています。

「あっちの、あの、寒い方にお住まいのカグラさんからお食事のお誘いを受けました」
「へえ、まさか行くつもりではありませんよね」
「まっさかー。行きますよ」
「行かないでください。あなたは私の……」
「恋人?」
「それです。ほら、サボらないで仕事してください」

ハザマさんハザマさん、わたしを助けてください。わたしは迷い子なのです。失楽園だ。わたしなんて生きている価値がないのかもしれません。

「ハザマさんはどうしていつでも冷たいんですか」
「馬鹿言わないでください。私はいつでも優しい男の子ですよ」
「男の子? 歳考えてください。何百年も何億年も生きてるくせに」
「どうしてそんなこと知っているんですかねえ」
「え? ハザマさん不老不死ですか?」
「うるせー女だな」
「わーい、テルミさんだあ」

テルミさんのことを愛しているのにハザマさんの逸物を飲み込んでしまうわたしをお許しください、神様、わたしは優柔不断な女です。ハザマさんに会えばテルミさんのことを考えて、テルミさんと話せばハザマさんを想ってしまいます。わたしはひどい女です。わたしは虫けらです。

「どうすんだよ」
「何をですか?」
「ハザマ」
「聞かれてるから答えられない」
「今は聞いちゃいねぇ」
「どっちもってだめですか」
「無理」
「わたしはテルミさんが大好きです」
「あっそ」

苦しい日々が終わったかと思ったら次は切ない日常がわたしを襲いました。わたしは罰当たりな人間です。さようなら、わたしなんて死んだ方がいいのです。
テルミさん、わたしを許してください。ハザマさんはわたしを許さないでください。わたしは死にます。

「ナマエ! 起きてください!」
「……………(起きられません)」
「私はナマエを」
「…………………(わたしは死にました)」
「起きろよ馬鹿女! 勝手に死んでんじゃねえよ!」
「……………………(生まれ変わったら魔法使いになりたい)」



魔法使いになりたい。自分の魔法で二人のことを忘れたいのです。死んでも意識は続くのですね。何も答えられないわたしは土に埋められてしまいましたとさ。めでたしめでたし。

back
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -