小説 | ナノ


▼ 01 じわじわ、ぐさり。

夢と現の狭間で、黄緑色の燐光が瞬いていた事だけ覚えている。

この感情をなんと表せば良いのだろうか。
哀しみ、憂い、後悔…
全ての負の感情を足してもまだ余りある。

あれから私の世界は色を失った。
楽しいということが何なのかわからなくなった。

そして、それ程彼は私にとって大きな存在だったのだと、まざまざと思い知らされたのだ。


あの日以来、アンダーテイカーは私の前から忽然と姿を消した。

何日も何日も待った。シエルに頼んで行方を捜してもらった。
彼が行きそうな所を方々訪ねて回った。

そして彼の部屋に入った時、私は気づいた。

私室には何も残っていなかったのだ。

服も、コップも、彼の大好きな骨型クッキーも。
まるで彼は最初からこの店に存在しなかったかのように全てを消し去り、自らも消えた。

私は見限られ、捨てられた。
彼は二度とここには戻ってこない。

そう頭が理解した時、全身の力が抜けた。
涙なんて出なかった。感情がすべて抜け落ちていく感じがした。

私の時間はあの日から止まってしまったのだ。





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