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▼ 01 君の街まで

小雨が降る肌寒い夕方、アンダーテイカーはがくんがくんと前後左右に揺れながら、ひどい道を馬車で移動していた。

ふとポケットに違和感があり取り出してみると、先日のパーティで拾った由里の壊れた髪飾りだった。
ころころとしばらく手の中で遊ばせる。

ほぼ1週間彼女を監視していたが、由里について分かったことは何一つなかった。
一つ気になる点といえば、由里が目を覚ました直後、少しだけ同胞である死神の気配を感じたことだった。近づいてみたが結局よくわからずじまい。あの時は少々気が立っていたので、気のせいかもしれない。

「おっと!」

がくんと大きく馬車が揺れ、手の中の髪飾りが落ちそうになる。大方車輪が石にでも当たったのだろう。


それにしても不思議な子だ。笑ったり、怒ったり、拗ねたり。表情がくるくると変わり、見ていて飽きない。

ドルイット子爵邸で消えた時や、赤い死神くんに刺された時は冷や冷やした。
後先考えずに行動するというか、なんというか…とにかく世話がやける子だ。

マダムレッドを庇った行動には正直驚いた。
長年人の生き様を見ていると、自分中心に生きている人間が呆れるほど多い。常に自分の利を考え、平気で他人を貶める。
その様を滑稽だと笑って見てきたのだ。

それなのに由里は自分の身を省みず、命を危険にさらしてまで他人を助けた。

「…人の命は一人一つだっていうのにねぇ」

あの子はそれがどういう事か、分かっていないのだろうか。
最後に念押ししたが、きっと小生の言いたいことは伝わってないのだろう。
仕方がない。と小さくため息をつく。

と、そこで自分が由里の事をしばらく考えていたことに気付き、慌てて手の中の髪飾りをポケットに戻す。


「…もう後戻りできないしねぇ」

そう呟くと、視線を窓の外に外した。



真夜中、とある病院の前にたどりつく。
馬車を降りると、一人の医者が手を広げて歓迎してくれた。

「やあ、今回はご協力感謝するよ」

その言葉に思わず笑ってしまいそうになる。この医者はどうも頭が弱いらしい。

「ヒッヒッヒ…いやぁ、こちらこそよろしく頼むよ」

そう答えると、そのまま二人は夜の病院へと姿を消した。






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