小説 | ナノ


▼ 03 理性の点滅信号

アンダーテイカーが出ていった扉を見つめる。先ほどの行動を思い出して少し恐怖を感じた。口調や格好から変な人だと思ったが瞬時に変わった目線や、威圧されるような雰囲気の変化に圧倒されてしまった。
倒れていた私を拾ってくれたことを鑑みると、悪い人ではなさそうだが油断は禁物だ。

そういえば、ここはどこなのだろう。
バードンと交わした人生のやり直し云々の話は、やはり夢だったのだろうか。
普通に考えてあり得ない、あり得なさすぎる。

「もーーわけわかんないわ」


とりあえず現在位置を把握するために外を見ようとベッドから降りる。
恐らくこの部屋は長い間使われていなかったのだろう。窓は堅く閉ざされていて中々開かない。軋む木製の窓をやっとの思いで開けると、そこには少し寂れた街並みが広がっていた。
どうやら夕方らしく時間帯も影響しているのか人っ子一人見当たらない。石造りでできた住宅街、取り込み忘れたタオルケット、屋根に止まるカラス。外から得られた情報はそれだけだった。
窓を閉め、視線を下にやるとテーブルの上に新聞が置いてあるのが見えた。手に取ってみると字体が安定していない文字が並んでいる。活版印刷というやつなのだろうか。この時代によくやるなぁと、何気なく日付を見たところで驚愕する。

そこには、2,Feb/1888 と記されていた。

ついに頭でもおかしくなったのか。目をこすり、何度見てもそこに書いてある文字は変わらない。


「…うそ、でしょ」


新聞紙を地面に落とし、ふらふらとベッドに倒れこむ。布団に体を預け、目を瞑ると以前の記憶を辿り始めた。

バーで起こった出来事は本当だったのだ。人生のやり直し、まったく違う環境での新しい人生。まさか年代を百年以上飛ばされるとは思わなかった。

たしあ今年は2017年だったはずだ。ロンドンへ学生旅行で訪れ何者かに刺される。

と、そこまで考えたところで思わず上半身を起こした。

もう一つ何か目的があってロンドンに来たはずだ。何?なんだっけ。
そもそもなんでロンドンなんだっけ。
どうやって来たんだっけ、飛行機?
というか私日本で何してたんだっけ
家はどこだっけ





……





あれ































記憶が、ない




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