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 夏のはじまり(1/4)



「緑谷くん!」

「緑谷!?大丈夫か!?」



麗日さんの通報によりショッピングモールは一時的に閉鎖。
区内のヒーローと警察が緊急捜査にあたるも結局見つからず、僕はその日のうちに警察署へ連れられ事情聴取を受けた。

雄英襲撃
保須事件

警察は既に敵連合に対し、特別捜査本部を設置し捜査にあたっているらしい。
その捜査に加わっている塚内さんに主犯・死柄木弔の人相や会話内容等を伝えた。



「ふむ…聞く限り連中も一枚岩じゃないみたいだな。オールマイト打倒も変わらず…といったとこかな。…………うん。よし、とりあえずありがとう緑谷くん」

「あ、いえ。僕が引き止められていれば良かったんですけど…」

「いやいや!むしろ自分と市民の命を握られながらよく耐えたよ。普通ならパニックになってもおかしくない。犠牲者ゼロは君が冷静でいたおかげだ」



塚内さんと共に外に出るとすっかり日は暮れてしまっていた。



「!緑谷!」

「ハル!?」



さすがに解散になってみんなもう家に帰ってると思っていたら警察署の前にはハルがいて、僕の姿を見るや否や心配そうに駆け寄ってくれた。



「もう遅いのにどうして…」

「……その…心配だったから」

「!」



ハルはワン・フォー・オールの話を初め、いろいろな僕たちの秘密を認知してもらっている。
数少ない秘密の共有者としていつも心配してくれて助けてくれる。
そんな姿から彼の優しさを僕はひしひしと感じていた。



「ありがとう。僕は大丈夫だよ」

「…ならよかった」

「緑谷少年!塚内くん!」

「おお良いタイミング」



聞き慣れた声のする方に顔を向けるとそこに居たのはトゥルーフォームのオールマイト。
どうやら僕に個人的な話があったらしくさっきからハルと一緒に待っていてくれたみたいだ。
オールマイトは僕の頭をポンと撫でながら優しく言う。



「無事で何よりだ。助けてやれなくてすまなかったな…」

「いえ…」



その時、不意に浮かぶ死柄木弔の言葉。




「救えなかった人間などいなかったかのようにヘラヘラ笑ってるからだよなあ」




「オールマイトも救けられなかった事はあるんですか…?」

「───…?」

「……………?」



オールマイトはハルを横目で見る。
少し意味深に思いながらも一瞬すぎる出来事だったのもあり僕は何も言うことが出来なかった。
少しの沈黙の後、オールマイトは言葉を紡いだ。



「…………………あるよ。たくさん」

「…………」

「今でもこの世界のどこかで誰かが傷つき倒れてるかもしれない。悔しいが私も人だ。手の届かない場所の人間は救えないさ…だからこそ笑って立つ。“正義の象徴”が人々の、ヒーローたちの、悪人たちの、心を常に灯せるようにね」





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