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 始まりの終わり 終わりの始まり(1/6)



事件から一夜明けても世間は騒然としていた。

現場となった神野区半壊。
人質として囚われていた生徒二人を保護したが内一名は意識不明の重体。
そして───この時代のNo.1ヒーローオールマイトの終幕。

社会に大きな影を残す結果となった本事件は問題視されており、警察本庁でも議論が繰り広げられていた。



「捕らえた脳無はいずれもこれまで同様人間的な反応がなく新たな情報は得られそうにありません。保管されていたという倉庫は消し飛ばされており、彼らの製造方法についても追って調査を進めるしかありません」

「そもそもその倉庫というのもフェイクじゃねえのか?生体実験なぞ行える環境ではねえし、場も安易すぎる」



バーにいた死柄木を初めとする敵連合メンバーの個人情報も掴みきれておらず、オール・フォー・ワンという大元は捕らえたが実行犯である死柄木たちを取り逃してしまったこの状況。



「とびきり甘く採点したとして…痛み分けといったところか」

「馬鹿野郎。平和の象徴と引き換えだぞ」



オールマイトの弱体化が世間に晒され、

もう今までの“絶対に倒れない平和の象徴”はいない。



「国民にとっても敵にとってもな」

「たった一人にもたれかかってきたツケだなァ…」

「あの人はどうした?オールマイトが活動出来なかった6年前に暗躍してくれた───…」

「…ヒーロー“タカ”か。あの人は既に引退している。それにもうヒーローとして活動できる心身では無い」

「そうだったのか。ここ数年全く話を聞かないと思えば……」

「メディア嫌いで世間にほとんど存在は認知されていない。知る人ぞ知る生ける“都市伝説ヒーロー”……もし彼が現役でもオールマイトの代わりにはなれない」



それほどオールマイトの存在は大きすぎた、と警察官は紡いだ。



「彼───今頃なにをしているんでしょうね…」







病院内、息を切らして走って向かう一人の男性の姿があった。
ナースステーションに飛び込むと中にいたナースに院内では静かにと怒られ、男性は肩で息をしながら謝ると顔を上げた。



「先程息子がここに搬送されたと伺いまして」

「失礼ですがお名前は?」

「!申し遅れました」



男は背負っていたカバンから名刺を取り出すとそれを見せながら言った。



「私の名前は────」







同病院内。
処置を施されたオールマイトの病室に同じく手当を受けたグラントリノと塚内がお見舞いに来ていた。
オールマイトは包帯でぐるぐるに巻かれた左手を見つめながらハッキリと言った。



「私の中の残り火は消えた。“平和の象徴”は死にました」



だが自分にはやらなければならない事があると告げると真っ直ぐな瞳を携えて顔を上げた。



「死柄木弔。志村の孫………か」

「奴の発言だろ?根拠が薄くないか?二人ともその先代の家族とは交流がなかったのか?」

「ああ…。志村の夫は殺されていてな」



志村菜奈は自分の子供をヒーロー世界から遠ざけるべく里子に出している。
オールマイトやグラントリノには自分にもしもの事があってもその子供には関わらないでほしいと言われていること。

これらをグラントリノが志村菜奈とのやり取りを懐かしむような素振りを見せつつ塚内へ伝えた。



「故人との約束が逆に…やるせないな」

「お師匠がせめて平穏にと決別した血縁…!私は死柄木を見つけなければ…見つけて彼を…」

「だめだ。見つけてどうする。おまえはもう奴を敵として見れていない。必ず迷う。素性はどうあれ奴は犯罪者だ」

「…………」

「おまえは雄英に残ってすべき事を全うしろ。平和の象徴ではいられなくなったとしてもオールマイトはまだ生きているんだ」



その時コンコンとノック音が響き渡る。
視線は自然と扉へ集まるがそこから現れた人物にその場にいた全員が目を丸く見開き驚きを隠せない。
そんな様子にその主は困ったように笑いながら言った。



「お化けでも見たようなリアクションじゃないか」

「君は……!!」

「……ご無沙汰です。グラントリノ、塚内さん───オールマイト」



そこにはオールマイトのかつての相棒でハルの父親の義孝の姿があった。





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