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 会うは別れの始め(5/5)



「荼毘!そいつ────」



奥から出てきた全身に黒と灰色を基調としたラバースーツをまとった男。
敵連合の一人であるトゥワイスはハルに近づき、被っていた帽子のつばを上げて顔を確認すると嬉しそうに言った。



「集合場所に向かってる途中だったけど運良かったな!不運だ!つーか……燃えてたけど大丈夫か?ザッコ!!!」

「(咄嗟に水をまとってダメージを最小限に抑えたか)加減できねぇんだ。ま、死んでねえから大丈夫だろ」



荼毘は気を失って倒れるハルを米俵のように肩に乗せて抱えると木にもたれかかって座っている野狐へと目を向けた。



「おまえ…目標見つけたのに何指くわえてんだ。てか逆に水で護られてたな」

「…ははは。ぐうの音も出ないわ。てか味方まで燃やそうとするのな」

「言ったろ。加減できねぇんだよ」

「(できねぇじゃなくてしようとしなかっただろーが…)」



野狐は顔を手で抑えながら乾いた笑いを浮かべると狐面を付け直す。
そんな野狐を追求することなく荼毘は言った。



「おい。腕だけで良いからこいつ“凝血塊(ぎょうけつこ)”で拘束しとけ」

「…どうせ目ェ覚まさないぞ」

「いいからやれ」

「起きて暴れられても困るからな。ビビってんじゃねーよ」



野狐は荼毘の指示通りハルの両手首を形態変化させた血で動かないように固定する。
それを確認すると再び荼毘たちはトゥワイスの言う集合場所へと足を進めた。



「そうだ。報告しとかねぇとな」



荼毘は耳に付けた無線のスイッチを入れた。



「…目標一人目の水科確保。引き続き爆豪の回収を急げ」



するとすぐに三人の無線は敵連合開闢行動隊メンバーの一人であるMr.コンプレスという男から新たなメッセージを受信する。



《開闢行動隊!こちらも目標…爆豪回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に回収地点へ向かえ!》

「おい荼毘!野狐!無線聞いたか!?テンション上がるぜ。Mr.コンプレスも早くも成功だってよ!遅えっつうんだよ。なあ!?眠くなってきちゃったよ」

「そう言うな。よくやってくれてる。後は“ここ”に戻ってくるのを待つだけだ。予定じゃここは炎とガスの壁で見つかりにくいハズだったんだがな────…ガスは晴れちまってるし、炎も小さくなってら」



荼毘はそう言いながらハルを一瞥した。



「予定通りにはいかねぇもんだな…………」

「さりゃそうさ!予定通りだぜ」



すると荼毘は不意に誰もいないはずの茂みの方をじっと見つめる。
だが何事も無かったかなように目をそらすと歩みを進めた。

先程まで黙っていた野狐が荼毘に向かって口を開いた。



「担ぐの代わるわ。元はと言えば俺が見つけたんだし」

「…………ぼーっとしてる奴に任せられねぇな」

「もう大丈夫。ほら元気元気!」

「野狐どうした?いつも頭おかしいな」

「それに荼毘はこの中で唯一声で脳無操れんだ。いざとなった時には身軽の方が良いだろー……ってかその脳無はどこだ?」

「ああ、いけねえ。何の為に戦闘加わんなかっって話だな」



荼毘は無線のスイッチを付けながら言った。



「死柄木から貰った“俺仕様”の怪物……一人くらいは殺してるかな」





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