◎ 会うは別れの始め(3/5)
USJ襲撃の時と同じ赤いジャージについているフードを被り、黒い狐面を付けた野狐は青山達を無視して、まっすぐに俺の方に向かって飛んでくる。
「久しぶりだな。今日はイカした帽子被ってんじゃん」
「!」
「でも似合わねーな」
野狐は“血を形態変化させる”個性持ち。
右手を血で鋭い爪を持つ殺傷力の高い形態に変化させると俺目掛けて躊躇いもなく振り下ろそうとする。
だが俺はそれをドライアイスで防ぐと小さく笑いながら返した。
「これ借りもんだから傷つけないでもらえる?」
「そりゃ───悪かったな!!」
くるりと身を翻すと蹴りを繰り出す。
防御したものの少しだけ後ずさったため青山たちと距離が出来る。
それを逆手に取り俺・野狐と青山たちの間にドライアイスで壁を作り互いの行き来が容易にできないようにする。
野狐も思惑には気づいていたようだが狙いはあくまで俺らしく青山たちを無視して攻撃を続ける。
あえて反撃はせず防御に徹しつつ、青山たちと距離を取るように誘導していく。
「やっぱりなかなかやるなー。一筋縄ではいかないとはこの事か」
「(USJの時は無口だったのに今日はよく喋るな…)」
服装や背丈、個性だってUSJの時と全く同じはずなのに、目の前にいる野狐はなんだか違和感を感じる。
口調が違うからか?
USJのときとは全く別人と接しているようなそんな感じ。
「…なあ、おまえは誰だ?」
「!」
顔の大半が狐面によって隠れてしまっているが見えている口元が弧を描く。
「俺は俺だよ。野狐だよ。ハル」
「…………!」(ゾワッ)
「まあ説明するにも今は時間ないし───」
「!」
距離を取っていたはずなのに一瞬にして目の前に移動してきて……!?
「詳しいことは敵連合に来たら教えてやるよ」
「!(熱気…!?)」
予期してなかったスピードに追いつけず血で固めた拳がハルの腹部へモロに決まる。
爪で引っかかれなかったため出血はないが、まるで鈍器のようにガチガチに固められた拳と細身な体つきからは考えられないような超パワーで思わずハルは膝を着く。
塚内さんから野狐は“血を形態変化させる”個性だと聞いていたけど、さっきの超スピードと超パワーに体から感じた熱気。
……やっぱり嫌な予感がする。
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