◎ 僕のヒーロー(4/5)
あともう少しでたどり着くという所で圧倒的なパワーとパワーのぶつかり合いにより、激しい音を立てて地面や壁が崩れたかと思うと勝敗が着いたのか沈黙が訪れる。
やっとたどり着いたその先、俺の視界にはボロボロになって立ち尽くす緑谷の姿。
肩で息をし、苦しそうな姿に俺は眉をひそめた。
「あ、オイ…!」
「緑谷!!!!」
倒れる寸前のところで緑谷を受け止めることが出来た俺はそのままゆっくりと座らせた。
近くにいる洸汰は……うん。大きな怪我はない。
それに戦っていた敵も意識を失っていてしばらくは起きそうな気配はない。
両腕ボロボロじゃねーか…いや腕だけじゃない。身体も…。
「洸汰くん……大丈夫?」
「僕は……でもおまえ……!!」
ならよかったと小さく笑うと緑谷はやらなきゃいけないことがあるからと立ち上がろうとする。
さすがに俺がそれを制止するとその時にやっと俺の存在に気づいたのか俺に向けて訴えかけた。
「ハァ…ハァ……さっき戦った奴は思ったより遥かに強い敵だった。もしこの夜襲に来た敵が全員このレベルなら皆が危ない…その上狙いは僕ら生徒かもしんない」
「!生徒が狙い…?」
「その事を相澤先生やプッシャーキャッツに伝えなきゃ!」
動こうとする緑谷を俺は無理やり押さえつける。
そんな俺に対して緑谷は鋭い瞳を向けながら離してと声を上げた。
言いたいことも、これからしなくちゃいけないこともわかるけど───こんな怪我を負っている緑谷を目の前に俺だって引けない。
「状況はわかった。わかったから…落ち着け…!」
「早くしないとかっちゃんが!それにハルだって……!!」
「…っ……
頼むから俺の話聞いてくれ!!」
「「!!」」
柄にもなく大きな声出しちゃった…二人とも驚いてるな…ごめんな。
だけどおかげで緑谷も少し落ち着いてくれた。
そんな緑谷にゆっくりと声をかける。
「こんな動くこともままならない状態のまま、また会敵したら───次こそはどうしようもなんないぞ。とりあえず怪我の状態だけ確認させて」
「…………」
大人しくなった緑谷にありがとうと声をかける。
こうはいったものの本当に生徒が狙われているなら緑谷の言う通り早く相澤先生達に報告するべきだ。
そういえば俺のスマホないな……コシュマールと戦った時に落としたのか?最悪だ…。
とりあえず今できる範囲で応急処置して────うわ、この腕…これ骨も筋肉も相当ダメージうけてるぞ……。
「腕ちょっとだけ動かすぞ…痛い?」
「……わからない」
「わからない……?(アドレナリン出てるから痛くないのか…?)」
「…なんていうか……感覚が…ないんだ」
「!」
医療に精通しているわけじゃないからもしかしたら間違っているかもしれない。
だけど緑谷の腕が俺が想像する最悪の状況になっているとしたら…。
すぐに救援は呼べない。
回復系の個性持ちはここにはいない。
俺しか……救えない……!
「……緑谷」
「?」
「………俺に怪我を“譲受”させてくれ」
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