◎ Re:オリジン(4/4)
人々を思いやり、行動に移せる善人や自らを省みず救けてしまうナチュラル・ボーン・ヒーロー達を護りたかった。
もう誰も泣かなくて済むように。
もう誰も血を流さなくて済むように。
もう二度と…俺たちみたいな奴が現れないように。
俺は…ヒーローになってこの社会を変えたかった。
「!(動いた…!)」
緑谷の勇姿を見て心を動かされた。
雄英に入って思いやりのある優しい仲間にたくさん出会えた。
昔、俺が見て絶望していた景色は社会のほんの一部だったんだと改めて理解したんだ。
「(速い!!)」
ナチュラル・ボーン・ヒーローを受け継ぐ
“未来のヒーロー”達の芽は摘ませない。
俺が必ず護る。
「っ!!」
激しい攻防が繰り広げられる中、ハルがコシュマールの腹部目掛けて重い一撃を入れた。
個性は使っていなかったが威力のあるパンチにコシュマールは後ずさり口元を拭った。
そして先程の余裕そうな様子から一変、頭に血が上ったのか額に青筋を浮かべながらハルを睨みつけた。
「てめぇ…調子乗ってんじゃねーぞ!」
「…………(恵まれた体格に甘んじて特訓してこなかったのか……)」
一撃一撃は“個性”を活用していないにしては重い。
ケンカ慣れしてる様子だけど今までの身体の使い方を見て、コシュマールは特別トレーニングをしてこなかったことを察する。
そして思い通りにならないと頭に血が上り逆上し、結果冷静さを失ってしまっていた。
闇雲に出された攻撃を避けてることは、日々トレーニングを積み重ねてきたハルにとっては避けるのは難しいことではなく、次の攻撃の機会を伺っていた。
「(俺の方がフィジカルは上だ。それにこいつは許可がなければ“個性”を使えない…俺の方が有利───)」
「(!ここだ!!)」
ステイン戦でも感じた本能的な戦闘の勘。
スローモーションに見えた相手の動きに合わせて最適な攻撃を繰り出す。
するとその攻撃は綺麗に決まったのか必要以上に怪我をさせることもなく自分よりガタイの良いコシュマールの意識を奪うことに成功。
「か、は………」
「ハァ…ハァ…」
ハルはコシュマールがつけていたネクタイを外すと身動きが取れないように拘束していく。
「(スタート地点の奴といい敵は複数人いて森に潜んでいる奴もいるだろう。それにこの匂いと音────森が燃やされてんのか?)」
その時、自分がいる場所より高い位置から物凄い音が響く。
音のする方へ目を向けると山の壁面が物凄い力を加えられたのか粉々に砕け崩れ落ちていた。
その様子を見てハルは緑谷とのやり取りが頭に浮かぶ。
「で、洸汰がいる秘密基地ってどこにあるんだ?」
「高台の横穴があるところ───」
施設も肝試し会場も高台にはない。
緑谷が敵と遭遇し、戦闘をしていると理解するには十分だった。
ハルは顔を青くすると急いで崖上へと足を進めた。
「(緑谷…洸汰…!頼む…無事でいてくれ……!!)」
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