◎ Re:オリジン(2/4)
森の中。
逃げられないように周辺を燃やされ孤立状態かつ睡眠ガスのようなものをまかれている状況。
ガスを吸って気を失ったB組の円場をおぶる轟と爆豪は施設へと足を進めていた。
「くっそ…!!」
「このガスも敵の仕業か。他の奴らが心配だが仕方ねえ。ゴール地点を避けて施設に向かうぞ。ここは中間地点にいたラグドールに任せよう」
「指図してんじゃねえ!」
足を進める中、少し気まずそうに轟が爆豪へと訪ねた。
「爆豪も…ハルの過去?…見たか」
「……ああ。おかげで最悪な気分だわ」
「あいつ会敵したのか…?まだスタートしてなかったはずだからマンダレイ達もいるはずだが…」
「この状況で考えてもどうしようもねえだろが。スマホも繋がらねえし、俺らは進むしか───」
その時、行く道の真ん中に座り込む人影。
それを注意深く見ていた爆豪はあることに気がつく。
「おい。俺らの前誰だった…!?」
「きれいだ。きれいだよ。ダメだ。仕事だ。見とれてた。ああ、いけない…」
「常闇と…障子…!!」
男の足元には転がるのは肘から下を切り落とされた腕。
その周辺には鮮血が広がっており、つい先程の出来事であることは容易に想像出来た。
「きれいな肉面。ああ、もう誘惑するなよ……………仕事しなきゃ」
「交戦すんなだぁ…!?」
◇
「あははははは!最高!最高だよ、ハル!!」
コシュマールは高らかに笑い声をあげる。
そして両手で頭を抱えて立ち尽くすハルを見てガスマスク越しにニヤリと笑った。
「なかなか良い“過去”持ってんじゃん。普段ニコニコしてる奴に限ってエグい過去持ってるんだけど、ハルってその典型的なパターンだな!」
「…………」
「親に捨てられ、友を殺され、憧れていたヒーローに裏切られ…滑稽だな!」
「黙れ…!!!」
ハルは顔を上げたかと思うと怒りに満ちた瞳でコシュマールを睨みつけたかと思うとそのまま殴りかかる。
コシュマールはそれを受け止めると呟いた。
「だからこそ相応しい。リーダーの判断はあながち間違いじゃなかったのかもな」
「リーダー?」
「んー?いやいや、こっちの話。あ、でも一応聞いとくか。さっきモスキートーンみたいな高い音聞こえたっしょ?あれ聞いた人間にはハルの過去見えてんの」
敵名コシュマール
個性「ナイトメア」
対象を1分間視界に入れると過去を読み取ることが出来る。
しかし、鮮明に読み取れるのは対象者のトラウマや負の感情が大きく渦巻いていた近辺に限る。
「!」
「あ、でも安心しな。全部じゃない。自分が負の感情でいっぱいになってるところは鮮明に取り出せてシェアできるけどそうじゃないとこはふわってしてるから。んで続き────ハルが笑顔で偽ってきた仲間たちにもハルの汚い部分は見えてんの。結構ドロドロだったけど……また受け入れてもらえるかね?」
コシュマールの揺さぶりにハルは動揺を隠せずいるとその隙をつくと言わんばかりに今度はコシュマールがハルの腹部に重いパンチを一発食らわせる。
腕を掴まれていたため吹っ飛びはしなかったが仰け反ってしまうほどの威力で痛みに顔を歪めた。
それを見てコシュマールはまた笑うとハルの前髪を掴みあげる。
「そこで提案。俺らと一緒に来い。敵連合の一員としてこのヒーロー社会を変えればいい」
「…………」
「生きづらかったよなぁ?苦しかったよなぁ?でもそれは今日で終わりだ!これからは固っ苦しく縛られることなく自分の思うままに進めばいい!だから一緒に来い!ハル!」
「…………ははは」
「!」
乾いた笑いを漏らしながらハルは掴まれていない方の手でズボンのポケットの中から小さな密閉型の小瓶を取り出す。
中には発生させたドライアイスが入っており、蓋をしたのち温冷水によって発生させたお湯で溶かしていく。
それを指でピンとコシュマール向けて弾くとハルは睨みながら笑った。
「やなこった」
爆発を回避すべくコシュマールは掴んでいた手を離し距離をとる。
爆破の衝撃で尻もちをついたハルは俯いていた。
「(……もうあの頃の俺とは違う)」
「こんの…!」
ハルはゆっくりと立ち上がりながら顔を上げる。
その表情は普段のハルからは想像もできないような眉間に皺を寄せて目に怒りを浮かべ笑っていた。
それを見たコシュマールは固まると思わず生唾を飲み込んだ。
「いいじゃねぇか……いい顔してるじゃねえか…ハル…!!」
「(この先の過去をこいつらは知らない)」
俺がまたここに戻ってきたきっかけを。
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