◎ 過去を喰らう(4/6)
これから先もずっと三人で笑い合うはずだった。
なのにその日常はいつも意図も容易く壊されていく。
無力な自分はいつも立ち尽くしてそれを見届けることしか出来ない。
「…ハル?」
「!!」
声の主を見ると目を見開いて立ち尽くすヒロの姿。
泣いている俺と血だらけになって抱きかかえられている幸の姿を確認すると手に持っていた袋は地面へと落ち、拳を握り直す。
握りしめた拳の震えから堪えきれないヒロの怒りを感じた。
周りの野次馬や敵の確保にいっぱいいっぱいになっていてハルと幸を無視するヒーロー達を見ると眉間にシワを寄せながら声を絞り出した。
「なんで、誰も救けねェんだよ……」
「(ヒロ……?)」
「どうしてこんなに人がいて、大人がいて、ヒーローがいて……
誰も手ェ差し出さないんだよ!!!」
野次馬は他人事のように俯き、ヒーロー達はそんなヒロを煩わしそうに睨みつける。
その場にいる者からヒロの言葉への返答はない。
身を呈して飛び込んだ幸とハル。
そしてこの状況下に疑問を投げかけるヒロ。
この三人はその現場において少数派の行動を取った人間で明らかに浮いていた。
「可哀想に…まだ子供だったのに……」
「救急は呼んだの!?まだなら早く…!」
「……てか、あの子が勝手に飛び込んだから刺されたんでしょ?ヒーローに任せとけばこんな事にはならなかったはずっしょ……」
「自業自得……」
「力もないのにヒーローぶるなよ…」
他人事な言葉が、心無い言葉が、
俺たちに容赦なく突き刺さる。
“正しさ”とは何か。
“正義”とは何か。
そんな考えが浮かんでは消えてを繰り返す。
「……(なんで……なんでこんなこと言われなくちゃいけないんだ?身を呈して護った幸がどうして………)」
「……ざけんな…」
「?」
「
ふざけんな!!!!」
怒りを露わにするヒロにプロヒーローは立ちはだかる。
そして全く手を出すような素振りを見せていないにも関わらず、ヒロを暴れないようにわざとらしく抑え込む。
「落ち着きなさい」
「っ!?離せ!!」
「……彼女のことは残念だった。だが私達も考えがあった。だが彼女達はそれを聞かずに飛び込み…最悪の事態を招いてしまった」
「!?」
違う!
この人たちは何もしようとしなかった。
ただこの状況を見守る傍観者の一人でしなかった。
俺が違うと首を振ったのをヒロが気づくと怒りを抑えきれず歯を食いしばると震えた声で言葉を絞り出した。
「……嘘つけ。全部自分を守るための方便だろ。何がヒーローだ……」
「…んだと…?」
むわっと感じる熱気。
それに気がついた時にはもう遅かった。
「全部…消えろ」
prev|
next