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 過去を喰らう(2/6)



中学生になってから俺は父方の実家、つまるところ俺のじいちゃんとばあちゃんの家にお世話になることになった。
父さんは心配そうにしていたけど俺の提案を受け入れてくれて海外へと飛び立つことを決めた。
そしてその時に父さんの個性“温冷水”を譲受させてもらった。

中学生になって自分の進路に真剣に考え始めた。
せっかく父さんからもらった“個性”を使って、俺はヒーロー科の高校を目指すことにした。



「将来ヒーローになるなら雄英一択だろ!!」



そう自信満々に告げるのは幼稚園時代からの幼なじみの温田正弘ことヒロ。
小学生の時に転校してしまってから会えてなかったけど俺が中学で戻ってきて再会したのだ。

ヒロはクラスの中心にいるような明るいやつ。
根拠は無いはずなのに自信満々に話すからすごく説得力があって何故かこっちまでその気にさせられることもしばしば。



「雄英なんて大きく出たなー…」

「おまえ昔から父さんやじいちゃんに鍛えてもらってんじゃん!しかも個性も譲受したんならいけるって!」

「馬鹿!声でかいって!それに…まだ温冷水の扱い慣れてねーし、俺はヒロとは違ってまだまだ……」

「いや待てよ!俺だってまだ実用的なとこでは使いこなせて………」

「そんな事ないよ!」



弱気な俺の発言に割り込む高く澄んだ声。



「2人なら絶対行けるって!私超応援するよ!!」



笑顔が良く似合うヒロの妹の温田幸。
兄妹と言えど年子で同じ学年。
昔からヒロにくっついていて、その流れで俺とも仲良くなって三人でいる事が多かった。

幸はヒロに比べてどちらかと言えば控えめで大人しめの性格。
いつも一歩引いて冷静に見てくれている幸からそう言ってもらえるのは正直嬉しかった。



「よーし!ハル!なんとしても雄英受かるぞ!放課後ハルんちのじいちゃんに特訓見てもらいたいんだけど行ってもいいか?」

「多分大丈夫」

「その意気その意気!」

「幸も来る?一緒に特訓しなくても、ばあちゃんが幸と話すの楽しみにしてるんだ」

「ほんと!?嬉しい…!なら行こうかな」

「よーし。放課後はハルんち集合な!」

「おー!」

「あはは…」



目指していた雄英高校にヒロと入学して、その活躍を幸にも見てもらう。
当時思い描いていた空想話を現実にすべく、俺たちは日夜特訓に励んでいた。

そして訪れる2年前、中学生2年生の夏。
その日は近所の花火大会が行われていて、ヒロと幸の三人で遊びに来ていた。

花火が上がる前にそれぞれの食べたいものを調達すべく別行動を取り、後で合流することに。
そんな中、ハルの目に止まったのはりんご飴。



「ハルは絶対りんご飴買ってくるに100円かけられるわ、俺」

「毎年買ってるもんね。りんご飴」

「なら今年買わねーぞ…」

「いや。おまえは絶対買う!何年前から一緒にいると思ってんだよ」



ヒロの言っていた通りついつい手が伸びてしまいハルは屋台のおじさんにりんご飴が欲しいと声をかけた。



「まいど!何個いるんだ?」

「えっと───…じゃあ三個で」

「はいよ」

「(夏祭りといえばりんご飴だよな〜。二人への布教用にも買っちゃった)」



大好きなりんご飴を待って、大切な親友たちと約束した待ち合わせ場所へと向かう足取りはどこか軽やかで。

まさかあんな出来事が待ち受けてるだなんて誰が予期できただろうか?





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