◎ 狼煙(3/4)
「ハル来てくれてありがとう…!」
洸汰の元へ行くと言って猛反対される緑谷を見て、自分も一緒に行くからとその場をなだめ、今も一緒に危険を省みず緑谷と共に森を駆け抜けて洸汰の元へとハルは向かっていた。
「何言っても緑谷ひかなかったろ。なら飯田たちに折れてもらう方が手っ取り早い」
「(飯田くん…僕のこと心配してくれたのにごめん…!)」
「で、洸汰がいる秘密基地ってどこにあるんだ?」
「高台の横穴があるところ───」
「!」
緑谷の話を聞き終える前にハルはバッと腕を横に広げて緑谷のゆく道を阻み、人差し指を口元に当ててしーっと喋らないように促す。
そしてポケットに入れていたスマホを取り出すと見てと言わんばかりそのスマホを指さす。
するとメッセージが一件。
《敵がいる》
「!」
《俺が囮になる。その隙に緑谷はコウタを頼む》
「!?(何言って───!)」
ハルの突飛な提案に緑谷は慌ててダメだとメッセージを送る。
するとハルは困ったように笑いながらメッセージを送った。
《今度は緑谷が折れて。時間がもったいない。それに緑谷しかコウタの居場所がわからないだろ》
「…!」
「……」(こくり)
緑谷は口パクでありがとうと伝えると洸汰がいると思われる場所へと走っていく。
そのすぐ直後に緑谷とは逆方向に足音を立てて走りながらハルは大きな声で叫んだ。
「おーい!!誰いないかーー!!!」
するとその声に誘われたかのように見知らぬ一人の男が現れる。
ガスマスクで覆われた顔面とは似つかわしくない黒スーツを纏う男はハルの姿を上から下まで見るや否や小さく呟く。
「大当たり」
「!」
意味深な言葉を漏らす男に警戒しながらハルは動向を伺う。
その間、マンダレイに言われた戦闘をしないという指示と今の現状を天秤にかけて自分がどうすべきか葛藤していた。
相手の“個性”は未知数。
それどころか敵の人数すらわからない中、徒に逃げ回るだけでどうにかなる状況下ではない。
男はそんなハルに構うことなく余裕そうに自己紹介を始めた。
「初めまして。俺の名前はコシュマール。おまえは───水科義晴だな」
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