アトラクトライト | ナノ

 グッドイブニング(2/4)



「なーなー!オールマイトの活躍見た?」

「見た見た!すげえよな!将来オールマイトみたいなヒーローになるんだ〜!」

「俺も俺も!」

「…………」

「なあ、ハル。ハルもオールマイトみたいなヒーロー憧れるよな!」

「……俺───」



誰もが憧れるNo.1ヒーロー。
圧倒的な力により彼が訪れた現場で助けられなかった人はおらず、そしてその存在感は多くの人を魅了するには十分なものでメディアで見ない日は一日もないほどだった。

ヒーローを志す大半の人のきっかけは“オールマイト”。



「オールマイトかっこいいよね」



実際オールマイトはかっこよかったし、好きだった。
だけど当時の俺には「そう言わなければならない」と一種の同調圧力のように感じて少し息苦しかった。
だけど言い返すだけの勇気はなくて笑って合わせることしか出来ない自分が悔しかった。



「目の前の人が大丈夫だーって安心出来るように俺は余裕だぞーって笑って手を差し伸べる。笑顔は自分も目の前の人も強くしてくれる」



だけどそんな俺の“笑顔”を否定せずに認めてくれる人がいた。
その人もいつも笑いながら俺にいろんなことを話してくれた。



「今やヒーローは“個性”を使って敵を倒すのがメインみたくなっているけど俺は違うと思ってる。困っている人がいれば手を差し伸べる。例えば……お腹を空いた人にパンを差し出す、道に迷った人を案内してあげるとか───。相手を思いやることから“正義”は始まる。昔の空想上のヒーローなんてそんな存在だったんだ」

「……」

「ハル」

「!」



ポンと優しく撫でてくれる温かいその手が好きだった。



「おまえは母さんに似て、優しい子だから大丈夫。きっと素敵なヒーローになれるよ」



テレビでの報道を拒み続けて、活躍の報告もしないからいつも世間からの賞賛はない。
徹底的なマスメディアにより表にあの人の姿が出ることはほとんもなかった。

「実は死んでいて幽霊説」
「噂で作り上げられた架空の都市伝説ヒーロー」

様々な憶測が立っていたけど俺は知っていた。



「(……父さんだってすごくかっこいい“ヒーロー”だ)」



俺にとって一番の憧れはすぐ近くにいた人で。
その大きな背中を目指して“ほぼ無個性”ながら必死にもがいていた。

そんな幼少期の頃をふと思い出したんだ。





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