◎ 個性(4/6)
あれから入浴など済ませて就寝時間を迎えた俺たちは電気消して各々の布団へと潜り込む。
誰かの寝息を聞きながら真っ暗な天井をボーッと眺めていた。
「(緑谷…一体どうしたんだろ…)」
俺の力になりたい、か。
俺は寝返りを打って布団に顔を突っ込むと目を固くつむる。
明日も早いから早く寝ないと。
そう思えば思うほどどんどん頭が冴えてきて眠れない。
ゆっくりと大部屋の扉を開けて廊下へと出る。
「だから───…」
「!」
明かりの漏れる部屋から相澤先生の声が聞こえてくる。
多分補習組がやってるのか…遅くまで大変だな。
俺はそんなみんなにバレないように足音を立てずに歩く。
薄暗く静かな廊下はどことなく不気味だったけど、おかげで変なこと考えずにすむ。
今の俺にはこのくらいの方が良い。
「……すっげえ…」
人がいないところで立ち止まり窓を開けるとそこに広がるのは満天の星空。
向こうではなかなか見ることの出来ない景色に思わず息を飲んだ。
俺は窓のサッシに肘をつくと星空をぼーっと眺めているその時だった。
後ろから気配を感じる───
「…………」
「どうしたの?洸汰」
「!」
俺が気づいているとは思っていなかったのか洸汰はビクッと身体を震わせていた。
そんな洸汰にニッと笑いかけてみるが、相変わらず心は開いてもらえず無表情のままぷいっと顔を背けられてしまった。
緑谷と一緒にマンダレイから聞いた洸汰の過去。
洸汰の嫌いな“ヒーロー”を目指す俺と口なんて聞きたくもないだろうなって思ってたけど…。
「(どうしてわざわざここに来てくれたんだろう…)」
「こんな遅くに何してんだよ」
「んー…散歩?洸汰はトイレとか?着いてってやろーか?」
「別にいらねーし」
言葉では相変わらずつんけんしていたけど、今までと違って立ち去ろうとしなかった。
「……なんで…」
「?」
「なんでそんな“個性”を伸ばそうとしてんだよ。そんな“弱い個性”……」
「……?」
“弱い個性”って…俺の“温冷水”のことか?
まだやらかしてる所は見てないはずだけどどうして洸汰はそう言ったのか考えていると二年前、敵によって二人のヒーローが殺された事件が頭をよぎる。
確か洸汰の両親が亡くなったのも二年前…
…もしかして────
「洸汰の両親って“ウォーターホース”か?水の“個性”の」
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