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 夏のはじまり(4/4)



切島の言葉にふと俺の記憶がフラッシュバックする。




「私、夏祭り好きだな」

「毎年買ってるもんね。りんご飴」

「……ハルくん、ありがとう」




夜空に爆弾のように咲き開く花火。
そんな綺麗な景色とは裏腹に地面に広がる赤い海。




「なんで、誰も救けねェんだよ……」

「どうしてこんなに人がいて、大人がいて、ヒーローがいて……誰も手ェ差し出さないんだよ!!!」

「全部…消えろ」




人々の喧騒と花火の爆発音に負けないくらいの叫び声をあげる親友の姿。
その瞬間光に包まれ、次に目を開けた時には………もうなにも残っていなかった。



「…………」

「ハル?」

「おいコラ」

「!」



爆豪の呼び掛けによって意識が戻される。
俺は笑いながら謝った。



「ごめん。俺はやめとくわ」

「えーせっかくの祭りだぞ?学生時代は一度きりだぞ!青春しねーともったいねーぞ!!」

「また来年もあるだろ?今日は用事あんの。じゃ、気をつけてなー!」

「…………」



そう言って笑って四人に手を振ると更衣室を後にした。

もう2年も前の事だから大丈夫だと思っていたのに、更衣室を出た瞬間、急に仮面が剥がれたかのように笑えなくなってしまい、目頭が熱くなってきた。
込み上げてきそうな熱を抑えるために俺は唇を噛み締めた。
こんな姿誰にも見られたくないと思った矢先、ちょうど着替えを終えた梅雨ちゃんが女子更衣室から現れた。



「!」

「あらハルちゃん。………どうしたの?」



梅雨ちゃんに聞かれて思わず俯いて顔を隠す。
なにか言い訳をしなければと考え、声色高めに言った。



「なんか目がゴロゴロしちゃってさ〜あ…あはは」

「そう……あまり酷いならリカバリーガールに見てもらった方が良いかもしれないわ」

「そうだね。ありがと!じゃあ…」



苦しすぎる言い訳と内心思いながら俺は足早にその場から離れていった。

俺の過去の話を知ってる人はクラスメイトにはいないし、これから先も別に話す予定もない。
だってあんな花府事件(過去)のことなんて話されても…みんな困るだけだろうし。



「(……夏なんて来なければ良いのに)」



この季節はいつも俺の大切な何かを奪っていく。





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