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「はあ…はあ………」



人の流れに逆らって走って、物陰に身を潜め後ろからハル達を撒けたのを確認すると立ち止まり、上がった息を整えることに。

とめどなく流れてくるヒロがハルと過ごした記憶。
野狐は頭に手を添えると冷や汗を流しながら小さく笑う。



「…わーったわーった。おまえにとってあいつは“親友”なんだな、ヒロ」



自分の中にいるもう1つの精神、ヒロに話しかけるように独り言を漏らす。



「……あいつとは体育祭の時に会ったな。ま、あん時はほぼ意思なかったから俺にとってはさっきのが初対面っつっても良いレベルかもな」



座り込む俺を心配そうに見つめる奴はいるものの、わざわざ手を差し伸べる奴なんてそうそういない。
ましてやこんな怪しいなりをしてる奴だ。
関わりたくないという気持ちはわかる。

だけど……



「あの…大丈夫ですか?」



あいつはなんの躊躇いもなく俺に手を差し伸べた。
おまえの記憶にいる幼いあいつと全く変わらない。

自分の利害など関係なく手を差し伸べ声をかけるその姿は全く変わらなかった。



「あ」



野狐はある人物の姿を見つけると歩みを進めた。
人の群れに紛れて従業員出入口へ入っていくそいつを追って周りに誰もいないことを確認すると声をかけた。



「おーい。死柄木」

「……なんの用だ」



真っ黒な洋装にフードを被っていかにも不審者感が否めない死柄木の姿を見て野狐は茶化すようによく疑われなかったなと言った。



「おまえも大概不審者だろ」

「……!なんか見つかったか?」



アジトから出ていった時とは違って機嫌の良い様子に野狐が尋ねると死柄木は笑顔を見せる。
だがその笑顔は猟奇的なもので思わず野狐の背筋に悪寒が走るほどだった。



「ああ。見つかったんだよ。俺らの信念」

「ほーう?」

「全部オールマイトだ。オールマイトのいない世界を創り、正義とやらがどれだけ脆弱か暴いてやる。これを今日から信念と呼ぶことにした」

「!」



迷いのなくなった瞳で死柄木は空を仰ぐ。
その姿がどこか野狐の記憶にある“あの人”と重なる。



「……なるほどね」

「それよりおまえは何しに来た」

「うちのリーダーを迎えに来たんだよ。その様子だと…みんなが納得出来る返答が出来そうだな」

「…………つくづく癪に障る奴だな、おまえ」

「それは深読みしすぎ。さ、帰ろっか」



目の前に現れる黒霧のワープ。
二人はゆっくりと足を進めた。





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