◎ エンカウンター(3/5)
「県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端!木梛区ショッピングモール!」
林間合宿は一週間を予定しているらしく必要なものを確認していると結構な大荷物になることが予測される。
ちょうど翌日は休みかつテスト明けということでA組の皆で買い物に行くことに。
轟はお見舞いで爆豪は…馴れ合いたくないとかで断られちゃったけど他の皆は都合がついてその二人を除いた全員が集結した。
普段制服姿しか見たことない皆の私服姿はなんだか新鮮で俺もちょっぴり恥ずかしかった。
「お!アレ雄英生じゃん!?1年!?」
「体育祭ウエーーーイ!!」
「うおお。まだ覚えてる人いるんだぁ…!」
物間も言ってたけど良くも悪くも目立っちゃってるよな。
「(さて俺は…スニーカーでも見てみようかな)」
「俺アウトドア系の靴ねえから買いてえんだけど」
「あー私も私もー!」
「上鳴ー俺も見に行きたい」
「靴は履きなれたものとしおりに書いて……あ、いや…しかしなる程、用途に合ったものを選ぶべきなのか…!?」
買いたいものや見たいものがバラけていたので、時間を決めて自由行動することに。
俺は上鳴や葉隠達と一緒に靴屋へと向かった。
たくさんのスニーカーにわくわくしながら眺めていると上鳴が話しかけてきた。
「ハルの今履いてるスニーカーもかっけーよなー」
「ありがと。スニーカー好きなんだよな」
「ハルってさゲームも好きだったり意外と多趣味だよな。登校する時も音楽聴いてんじゃん?何聴いてんの?」
「いろいろ───そうだな…………。最近だと…アイミジンの曲とかよく聴いてる」
「アイミジン!?」
ガバッと耳郎が俺たちの元に駆け寄ってくる。
そして少し興奮気味に続けた。
「ウチもすっごい好き!まさか好きな人身近にいたなんて…!!」
「へー有名なのか?」
「もともとネットで活動してる人で最近かなり注目されてるよ。曲調はロックテイストからミディアムバラードにポップなものと幅広く多彩で…歌詞も情緒的で詩的なのがまた良いんだよなー!」
「…………」
熱く語る耳郎の話を聞くとなんだか恥ずかしくなってきて顔に熱を帯びるのを感じる。
だってアイミジンは…俺の────
「ハル?」
「!あ、だな!アイミジン良いよな〜〜!あはは…」
「お前らがそんなに言うならちょっと気になってきたわ」
「今度CD貸したげるよ」
「マジ!?耳郎ありがとな!!」
そんな話をしているとふと視界の端に麗日の姿が映る。
てっきり雰囲気的に緑谷と回ってると思ったんだけど一人でどうしたんだろ?
「おーい、麗日」
「!ハルくん。どうしたん?」
「いや、上鳴達と靴見てたら麗日が見えたから。緑谷は一緒じゃないの?」
俺が緑谷のことを聞くと麗日の顔が真っ赤に染まる。
これは……前から薄々感じていたけど確信では……?
だけどこれは俺が聞いても良いんだろうか?
こういうトークは女子同士でやるのが定石?
なら俺がわざわざ突っ込むのはおっせかいのような…うーん…。
「いや、別にデクくんのこと避けとる訳じゃなくてちょっと動揺して逃げ出してしまったけど決してそういうことでもないし!本能的というかなんというか…あ、でもデクくんには悪いことしちゃったから謝らんと!そう戻らんと!いやでも───」(ペラペラ)
「はいはい。とりあえず落ち着こーな!!」
動揺しまくってる麗日を落ち着かせて一緒に深呼吸をする。
すると少し落ち着いたみたいだが頬は以前赤く染ったまま。
「まあ…いろいろあって緑谷を放って来ちゃったんだな」
「つまるところそんな感じ…」
「んー……まあ、麗日が嫌じゃなかったら戻ってあげたら?」
「え?」
「せっかく皆で来たのに一人で買い物なんて寂しいし、麗日と緑谷の目的が一緒なら買い物したらいいじゃん」
もしも麗日が緑谷の事を好きだとして、こんな風に照れて逃げてしまってらなかなか自分の意思だけでは戻りにくい───けど一緒にいたい気持ちはきっとあるはず。
別にそんなの無理して我慢する必要なんてない。
「(ま、お節介かもしれないけど…)」
一緒にいれる時間は有限だ。
だからこそ一緒にいられるうちに傍にいたら良い。
伝えたい想いがあるなら伝えた方が良い。
「俺はここで靴見たいし。緑谷のこと頼むなー」
そう言うとニッと笑いかけた。
「ま、まあハルくんが言うならしゃーない。私もデクくんには謝らんとダメだなって思ってたし!別に一緒に買い物したいとかじゃなくて───」
「はいはい。ほら行ってらっしゃーい」
麗日の体をくるっと後ろ向きに回転させると背中をポンと押す。
すると戸惑いながらもどこか足取りは軽く来た道を引き返していった。
そんな姿を見てなんだか微笑ましくなって笑顔が零れた。
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