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 もうじき夏が終わるから(5/7)



「たこ焼きある!梅雨ちゃん!食べよー!」

「お茶子ちゃん。走ると危ないわよ」



結局俺は緑谷、飯田、轟、麗日、梅雨ちゃんの6人で屋台を巡ることに。
相変わらず俺と轟はひょっとこ面をつけていて時々会う他のA組の皆に笑われた。



「デクくんたちの分も買ってくるねー!」

「ありがとう。麗日さん」



走っていく麗日とそれを追いかける梅雨ちゃんを俺たちは見送った。
周りをキョロキョロと見渡しながら飯田が口を開く。



「大分混んできたな。はぐれないように気をつけよう」

「暗くなってきたしそろそろ始まりそうだね」

「…………」



夜の花火大会に向けて高まる期待。
どんどんと熱を帯びていく会場に俺は少し目を細めた。

遠くで聞こえる気がする。
大きな花火の音と一緒に──────



「ハル」

「!!」



突然呼ばれた名前に驚いてその声の主の方を見る。
いきなり俺が勢いよく振り返ったからか轟は目を丸くして驚いていた。

そんな俺を心配してか、大丈夫か?と声をかけてくれた。
俺は一度視線を落としてから顔を上げてお面越しに笑顔を浮かべながら頭をかいた。



「お腹すいてちょっとぼーっとしてた」

「…………」

「轟。焼きそば食べない?あっちの屋台」

「……ああ」



人混みをかき分けて俺と轟は焼きそば屋台に並んだ。



「轟は焼きそば食べたことある?」

「ああ。姉ちゃんが作ってくれた」

「お姉さんいるんだ。手料理良いな。何がいちばん得意なんだ?」

「基本なんでも美味いけどそうだな……」



たわいの無い話をしていたらあっという間に順番が回ってきて俺たちはみんなの分も含めて少し多めに焼きそばを買った。

その間、轟は踏み込むこともなく傍にいてくれた。
そんな優しさに救われる。
俺の周りにはいつでも優しい人たちがいてくれた。



「緑谷たちは────」



場所的に少しだけ道が狭く混み合う人ごみをなんとかかき分けて進んでいく。
途中で割り込まれて轟の背中が見えなくなった。



「(あ……迷子になりそう)」



迷子になったって校内なわけで、なんなら“個性”を使って上空から探せばすぐ見つけられる。

だけど轟の背中が見えなくなった瞬間、やけに不安になって。
お面で狭くなった視界が急に煩わしくなって外して頭につけた。

視界が開けたとと共に狭い道が終わって広場に出た。



「ハル!」



人混みが少しましになって、開けたところに先程たこ焼きを買いに行っていた麗日と梅雨ちゃん、そして緑谷と飯田のもとに轟は一足先に到着していた。
緑谷は俺を見つけるや否や笑顔で手を挙げながら名前を呼んでここにいることを教えてくれた。



「おーい!」



みんなの姿を見つけて安堵した俺は早歩きをやめてゆっくりと近づく。
それにつれて緑谷と飯田があるものを持っていることに気づいた。




「ハルは絶対りんご飴買ってくるに100円かけられるわ、俺」

「毎年買ってるもんね。りんご飴」




記憶がフラッシュバックする。



「これハルが好きだって言ってた気がしたから買ってきたんだ」

「(あ…やばいかも……)」



記憶の中の二人は確かに笑っているのに、頭がぐらりとするような嫌な感覚に襲われる。
そんな俺に追い打ちをかけるように聞こえてきたのは……



ドーーーン



大きな花火の音。



「わっ!びっくりしたー」

「まだ時間ではない……ということは試し打ちか?」

「まだ完全には暗くなってないしね」

「ハル悪い。止まろうにも人が来てて止まれなくて────」

「……ああ。ううん。大丈夫」



笑って答えた。
笑ってたつもりだったけど………俺、今どんな顔してるんだろう。



「ハルちゃ─────」

「時間まだあるんだよな?俺ちょっとトイレ行ってくる。また連絡するから先に行ってて」

「え、あ、ちょ────」

「ハルくん!?」

「行っちゃった…………」





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