アトラクトライト | ナノ

 話したいことがあるんだ(6/6)



「ふう……」



持ってくる荷物をなるべく減らしたつもりだったけどやっぱり荷解きして整理整頓するのって大変だな。
昼間から取りかかったのに気づけば夕方になってしまっていた。




「“個性”を譲受出来るっつってたがお前以外にンな“個性”持ってるやついんのか」

「俺以外だとオールマイトと戦ってたオール・フォー・ワンは人の“個性”を与えたり、奪ったりすることが出来るって聞いたけど……」

「……そんな“個性”持ってんのは…“個性”の移動が可能な人間は本当にお前とあの梅干し野郎だけか」

「どうしてそんなこと聞くんだ?」

「………何でもねえよ。悪かったな」




部屋を出る直前に爆豪から聞かれた“個性”の譲渡について。
その時は平然を装いつつなんとかはぐらかしたものの…あの爆豪の雰囲気を見るにワン・フォー・オールについて察してる…?



「(あんまり考えたくない話だけど……)」



緑谷と爆豪は昔からの幼なじみ。
もちろん緑谷が“無個性”だった過去を知ってる。
そして今回の事件でオールマイトは力を失ってしまったし、俺からのカミングアウトによって“個性”の移動に関与する“個性”が存在することを明らかにしてしまった。
あれ?もしかして俺もやらかした…?



「(オールマイトや緑谷に伝えるか?いや、緑谷は正直だから言うとかえってボロが出るかも…………というより)」



内心爆豪からワン・フォー・オールと緑谷の関係性について隠しきることは難しいのではないかとも思っていた。
緑谷に対してどんな心象を抱いているかはわからないけど、前の緑谷の発言を無闇矢鱈に言いふらしたりしていないのを見るにあいつなら逆に力になってくれるかもしれないなんて……………




「黙れよオールマイト…!あのクソの力ぁ借りるくらいなら…負けた方がまだ……マシだ」




「(買い被りすぎかな…)うーん……」



その時お腹がぐうと鳴る。
いくら思考を巡らせていても身体は正直なもんだ。
確か食事は1階の共同スペースで皆で食べるんだったよな。

エレベーターに乗って1階へ降りていき、ドアが開いた瞬間だった。



パン!!!



「!?」

「「「「ハル(くん)おかえりーーー!!」」」」



突然鳴らされたクラッカーに驚きを隠せない俺に対して麗日が「今日の主役」と書かれたたすきを俺にかける。

周りを見渡すと折り紙で作った輪を繋げたもので部屋が装飾されていたり、机にはご馳走が並んでいたり……片付け前とは違ってパーティー仕様に変貌を遂げていた。



「今回はクラッカー成功したな」

「ハルくんの退院祝いを皆でやろうって言ってんだー!」

「無事に戻ってきてくれて良かった」

「ホントに!やっと21人全員揃えたね!」



葉隠の言った「21人全員揃えた」がやけに心に響いて、改めて皆の顔を見る嬉しいようなと安心したようなそんな気持ちがまた襲いかかる。
今回は先程と違って爆豪もいてくれた。

この事件を通じて皆一緒にいられることは当たり前の事じゃなくて、いろんな奇跡が折り重なっているものなんだと実感した。
だから……俺からしたら皆も無事に生き延びてこうして笑っていてくれるのが嬉しくてたまらない。



「皆……ただいま!」




皆、ありがとう。





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