◎ 話したいことがあるんだ(5/6)
100%の力を出していない奴に自分は負けてきたのか。
それにこいつは使いこなせてねえ“個性(力)”によって自滅して梅干し野郎に良いように利用されたのか。
ふざけんな…。
ふざけんな…!
「なのになんで────」
だが…もっと腹が立つのは目の前にいたのに戦うどころかその土俵にすら立てずに指をくわえてこいつが連れていくのを見ていたあの時の自分。
俺は勝ち負けを選択することすら叶わなかった。
「テメェは負けてんだよ…」
全てに勝って俺が完膚無きまでの一位になる。
だから目の前にいるこいつにも勝たなきゃいけねえ。
俺が唯一勝てなかった……こいつに。
なのに期末の時もクソ連合の時も負けてんだよ。
俺が勝てなかったテメェはンな弱くねえだろ。
悔しいが戦闘センスも経験も雄英の中ではずば抜けてやがる。
なのになんで……!
「爆豪」
「!」
名前を呼ばれて反射的に顔を上げる。
そこにはあいつがいて、まっすぐな瞳が俺を捕える。
俺は全てを見透かしているようなあいつの青い瞳が……
「……ごめんな」
嫌いだった。
「はあ?何謝ってんだ。気色悪ィ…」
「爆豪はずっと俺に言ってくれたよな。“最後まで立ってないと意味無い”って。なのに俺はその真意に目を向けようとしなかった」
ふと気づいた。
サシでの戦闘や生徒同士の実力差があまりない演習ではこいつは敵無しだ。
だが、今回のように実力差がある敵に対して“複数人”で立ち向かうとなった場合、負けていることに。
「自分が死んでも護れれば良いって、皆で生き残ることも周りを信じることも俺は諦めてた。今思えば皆に対して不誠実だったし、特に────“自分が勝って救ける”ことに信念を置いていた爆豪には顔向け出来なかった」
だから、ごめん。
そう言葉を紡いだ。
「ということで…………宣誓!!」
「!いきなり大声出すな!!」
シリアスな雰囲気から一変大声を張り上げるこいつ不覚にも驚いちまった…クソッ。
しかも悪びれもなくへらへらしやがって…。
「悪い悪い。爆豪の前で宣誓しといたら身が引き締まるかと思って」
「ンなワケねーだろ」
「それがンなワケあるんだよな」
意味わかんねえ…。
こほんとわざとらしく咳払いすると右手を軽く挙げながら宣誓と言った。
本当にこいつ俺に宣誓するつもりかよ。
「これから俺は自分の身を犠牲にせずに救ける方法を模索する。その上で皆を護るヒーローになる」
「……消極的か」
「え゛」
「“誰にも負けねえ、全部救ける”くらい言えや!!」
「!…あはは!」
「!」
「キャーサスガバクゴークンステキー!」
「しばき殺すぞ!!!」
俺は護られるつもりなんてはなからねぇわ。
勝負するなら“完全勝利”一択。
それはお前にも当てはまる。
「つーかいつまで部屋にいるつもりだ!さっさと出てけ!!」
「いいじゃん。ほらゲームでもしよーぜ」
「しねえわ!ついでに死ね!!」
「……上手い」
「っ…!クソが……!!」
ハル。
俺はお前にも必ず勝ってみせる
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