◎ 話したいことがあるんだ(4/6)
俺の部屋は最上階の5階角部屋。
隣は砂糖で同じ階には轟と瀬呂、棟は違うけどヤオモモと梅雨ちゃんの部屋があるみたい。
荷解きをすると言ってエレベーターに乗り込んだ俺が押したのは5階ではなく1つ下の4階。
障子、切島、爆豪の部屋がある階だ。
部屋を間違えないように見取り図と実際の扉を何度も見比べると奥から2つ目の爆豪の部屋のドアをノックする。
「………おーい。バクゴー」
呼びかけても返答はなく沈黙で包まれる。
絶対部屋の中にいるくせに居留守なんて許さんぞ!
「おーーーーい。バクゴークーーン。いるのはわかってんぞーー出てこーい」
「…………」(シーン)
「…かっちゃーーん。かっちゃんかっちゃんかっちゃーん」
ひたすらノックを繰り返しながら名前を呼び続けているとドタドタも足音が近づいてきて勢いよくドアが開かれる。
イライラMAXで顔に青筋を浮かべ、見るからに不機嫌な様子の爆豪が顔を表した。
「
うっせえ!!!あと気安く呼ぶな!!!」
ドアが開かれればこっちのものだ。
爆豪の気迫に負けず、俺は足でドアを閉じられないように押さえるとにっこり笑った。
「やっと出てきてくれたな〜爆豪〜」
「!チッ。その足どけやがれ!」
「やだ。爆豪に話したいことがあるんだからちょっと時間くれよ」
「俺はねえ。早く帰れや」
「…………」
そう一蹴し、眉間に皺を寄せたまま俺から視線を落とす爆豪の様子が以前の父さんと重なった。
話し合うことから逃げ続けた結果すれ違って、見えるばすのものも見えなくなったあの時みたい。
爆豪の考えてる事の全てはわからないけど、なんとなくわかる事もあるんだ。
その一つに……爆豪が俺を避ける理由。
「……知らん!てことで邪魔するぞー」
「!テメェ!!」
爆豪を押しのけて部屋へと侵入していく。
まじで迷惑な奴極まりないけど…これを逃すと一生爆豪とぎくしゃくしたままな気がして……俺にとってはその方が嫌だったんだ。
爆豪の部屋はモノトーンでシンプルにまとめられていて落ち着きのある雰囲気だった。
ふと棚に目をやるとそこには少し年季の入ったオールマイトのフィギュアが置いてあった。
俺の視線に気づいたのか爆豪は大きく舌打ちをするとそのフィギュアを隠すように立つからそんな姿に思わず笑みがこぼれた。
「(人の部屋って新鮮……爆豪らしいといえば爆豪らしい部屋だな……)」
「…………(図々しく押し入ってきた割には隅っこで立ち尽くしてんのかよ)」
「…………」
「……で、なんだよ」
「!」
爆豪は堪忍したような様子でベッドに腰をかけると俺に問いかけた。
その間も視線は俯き気味で俺と目が合うことはなかった。
「まず俺の“個性”について話させて。皆にはさっき言ったんだけど────」
皆に話したように爆豪にも“譲受”について話をさせてもらった。
“個性の譲受”に関して話をしている時になんだか反応があったような気がしたけど特に言及されることはなかった。
俺のただの気のせいだったのか?
「…今まで使ってたのはテメェの“個性”の一部だったっつーことか」
「!」
「……おまけにその“個性”そのものを使えば、制御出来ずに動けなくなっただあ?何デクみたいなことしてんだ」
振り絞るように声を発しながらギロっと俺を睨みつける。
「勝たねえと意味ねえんだよ…どんだけピンチでもヒーローなら最後には必ず勝たねえといけねえ」
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