◎ 話したいことがあるんだ(2/6)
「やっぱり本物は迫力違うわ」
無事に?ハルのお出迎えには成功して、共同エリアにて皆で会話に花を咲かせていた。
「確かに迫力はかっちゃんの方があったけど、声だけ聞くと一瞬かっちゃん二人いる!?って焦ったよ」
「皆ぽかんとしてて面白かったわ〜」
いつもの様にハルはニッと笑う。
そんな様子に皆も安心したのか釣られて笑顔がこぼれていた。
「そういえば昨日皆の部屋回ってベストセンス決定戦やったんだぜ」
「良いな!ちなみに誰が優勝したの?」
「砂糖さんですわ」
「あいつ、作ったシフォンケーキで女子買収したんだぞ」
「人聞き悪いこと言うな!」
「えー俺も砂糖のケーキ食べたい」
「今日の晩作る予定だから楽しみにしといてくれよ」
「やったー!」
少し時間はかかっちゃったけど…また1年A組21人全員で集まれて本当に良かった。
だけどかっちゃんはハルを迎えると早々に部屋に戻ってしまった。一体どうしたんだろう…?
大声を出していたから体調が悪いって感じではないだろうし…。
「…皆に話したいことがあるんだ」
そう言ったハルに皆の視線が集まる。
それは僕も例外ではなかったけどきっと“あの事”について話すんだろうなって察していた。
するとその予感は的中する。
「俺の“個性”についてなんだけど……と、その前に俺の過去も知ってる奴いるんだよな?」
施設に戻っていたメンバーにはコシュマールの“ナイトメア”の影響を受けていなかったのか頭に疑問符を浮かべていた。
だけど僕を始め、屋外にいたメンバーは“ナイトメア”の影響を受け、断片的にではあったけどハルの記憶を覗き見てしまった。
各々の様子を見てハルは察したのか困ったように小さく笑みを浮かべながら続けた。
「(大体半々くらいってとこか)…過去のことは気にするなって言っても難しいよな。…だけど俺なりに乗り越えたつもりだから遠慮しないで。俺は皆と一緒に未来(これから)を大切にしていきたい。だから───…」
急にハルは言葉を詰まらせたかと思うと少しだけ恥ずかそうに心做しか小さめ声で言った。
「これからも友達として…仲間として、一緒にいさせて欲しいんだ」
「「!!」」
「なんか改めて言うと照れくさいな〜…あははは…」
頬を赤らめながら笑みを零すハルの姿を見て僕は嬉しくて目の奥が熱くなった。
ハルからこんな風に話してくれて、きっと君のことだからすごく勇気を振り絞ってくれたに違いない。
それを見て以前に増して僕らのことを信頼してくれるんだとそう思ったからだ。
それは僕だけじゃなくて他の皆もそう感じていたようで、切島くんや飯田くんが近くにいた僕や常闇くん、轟くんたちを巻き込みながらハルに向かって飛びついた。
「!!」
「いでででででっ」
「なんだよなんだよ改まって!んなの当たり前だろーが!!」
「ハルくん!僕らは仲間だ!友だ!切磋琢磨しあい共に最高のヒーローを目指していこう!!」
「切島、飯田落ち着け…!!」
「も、もう無理…っ」
僕らの重みに耐えきれなくなったハルが倒れていくと僕らも覆い被さるように倒れていく。
大きな物音が響き、一瞬訪れる沈黙。
だけどその光景を見て誰かがぷっと吹き出すとそれを皮切りに皆から笑顔がこぼれた。
「二人とも感極まりすぎ。ちょっと落ち着けよなー」
「男同士の抱擁なんて誰も得しねーっての…」
「んだよ!熱くていいだろ!!?」
「ハルさんは病み上がりなんですからあまり無理させてはいけませんわ」
「後先考えないっていうかなんというか───」
「あはは!でもこういうの好きだ!男同士の友情ってやつ?」
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