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 いつもの日常へ(5/5)



ハルの電話を切ってから芦戸さんからの提案により部屋のお披露目大会が始まった。
皆の個性が光る部屋を見ていくうちに突然第一回A組ベストセンス決定戦を開催することに。

栄えある初代チャンピオンは…



「得票数5票!!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は───…砂藤力道ーーーー!!!」

「はああ!!?」

「ちなみに全て女子票。理由は“ケーキが美味しかった”だそうです」

「部屋は!!」



部屋の片付けが早く終わった砂糖くんは皆が食べるからとシフォンケーキを焼いていてくれた。
甘すぎず生地もふわふわしていて……とても美味しかったなぁ。

こうして先に寝てしまったかっちゃんと気分が優れない蛙水さん、そしてハルを除いたベストセンス決定戦は幕を閉じた。
部屋に戻ろうとした時、僕と轟くん、飯田くん、切島くん、八百万さんの五人は麗日さんに呼び止められた。
そんな麗日さんに連れられて外に出てみるとそこには蛙水さんが立っていた。



「あのね。梅雨ちゃん皆にお話したいんだって」

「私思ったことはなんでも言っちゃうの」



蛙水さんは俯きながら言葉を振り絞るように言った。



「でも何て言ったらいいのかわからない時もあるの。病院で私が言った言葉憶えてるかしら?」




「ルールを破るというならその行為は敵のそれと同じなのよ」




「……うん」

「心を鬼にして辛い言い方をしたわ」

「梅雨ちゃん…」

「それでも皆行ってしまったと今朝聞いてとてもショックだったの。止めたつもりになってた。不甲斐なさや色んな嫌な気持ちが溢れて…」



蛙水さんの声が震えていくと同時に目に涙が溢れていく。



「何て言ったらいいのかわからなくなって、皆と楽しくお喋りできそうになかったのよ。でもそれはとても悲しいの」



行き場をなくした涙は大粒な雫を象って蛙水さんの頬を伝って落ちていった。



「だから…まとまらなくってもちゃんとお話をして、皆と楽しくお喋りできるようにしたいと思ったの」

「────……」



轟くんが言っていたように僕たちのやった事は誰からも認められないエゴだった。
相澤先生を初めていろんな人に怒られてしまったけど…結果的に皆無事に戻ってこれたからこれで良かったと終わらせてしまっていたけど…そうじゃなかった。

蛙水さんは皆僕らを心配して止めてくれたのにそれを裏切って……こんな風に傷つけてしまっていたことにどうして気づけなかったんだろう。



「梅雨ちゃんだけじゃないよ。皆すんごい不安で拭い去りたくって、だから…部屋王とかやったのもきっとデクくんたちの気持ちはわかってたからこそのアレで…だから責めるんじゃなくてまたアレ…なんていうか…ムズいけど……」



麗日さんは「とにかく」と括るといつもの明るい笑顔を浮かべた。



「また皆で笑って…頑張ってこうってヤツさ!!」



皆戻そうと頑張ってくれていたんだ。



「梅雨ちゃん…すまねえ!!話してくれてありがとう!!」

「蛙水さん!」

「蛙水すまねえ」

「梅雨ちゃん君!」

「あす…ゆちゃん!」

「ケロッ」

「明日はハルくんのおかえり会だし早く寝よう!」




いつもの、

そういつもの、

ヒーローを目指し切磋琢磨する



あの日常へ!!





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