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 いつもの日常へ(3/5)



窓の外に流れる風景がビル街から山や田んぼが目立つ田舎の街並みへと変わっていく。

皆はもう学校に集まってるのかな?
日中堂々と俺だけ外出してるのがなんだか新鮮でワクワクしている反面、ちょっと悪いことしてるみたいと思う自分がいる。



「明日から学校なのにごめんね」

「ううん。父さんも明日には戻るんだよね?」

「ああ。戻る前に行けて良かったよ」



父さんが運転する車に乗るの久々だな。
てか基本電車移動だから車乗るの自体久々だ。
好きな音楽かけてのんびり出来るこの空間と時間は昔から好きだったなと思いながら流れていく景色を見つめていた。

俺らは“目的地”に向かう前に花屋に寄った。
そこで花束を2つ買うとまた車に乗り込んで出発した。



「さっきの花屋のお姉さん綺麗な人だったなー…」(ボソッ)

「!…あはは!ハルのタイプはあんな感じの人なんだな〜。そっかそっか……そういえば雄英に好きな子とかいないの?」

「ぶっ!!……と…唐突だなー」

「振ってきたのはそっちだろ?」



好きな子の話、最近あった出来事、音楽の話、ヒーローの話───…
今まで出来ていなかった親子同士でするようななんでもない会話が楽しくて車内ではずっと喋っていた。

気づけば1箇所目の目的地に着いていて、車から降りるとむわっと俺たちを包み込むこの時期独特の生暖かい風。
青々とした草木の香りと相まって夏を再認識した。



「…………」

「行こうか」



父さんと共に歩みを進めていくといくつも立ち並ぶお墓たち。
俺たちは「水科家」と書かれた墓前の立つと持ってきた道具を使って掃除を始めた。



「定期的に来てくれてたんだね。ありがとう」

「て言っても2ヶ月1回来れたら良い方なんだけどね」

「十分だよ。きっと…ハルが来てくれるだけで二人は喜んでるよ」



ここには爺ちゃんと母さんが眠っている。
話の通り定期的に1人では来ていたけど…父さんと一緒に来れたのはいつぶりかな?

綺麗になったお墓に先程買ってきた花を生ける。
花が夏の青空によく生えてとても綺麗で思わず笑みがこぼれた。

火をつけて煙の経つ線香を線香立てに立てかけると俺たちは横に並んで手を合わせると目を閉じた。



「…………」



爺ちゃん、久しぶり。
相変わらず雄英で頑張ってるよ。
でも爺ちゃんが見たら……まだまだだっ!って怒られちゃいそうだな…。
これからもっと頑張るから見守っててね。

母さん、随分時間が経ってごめんね。
だけど俺らやっと向き合えたよ。
やっと互いに前を向いて歩けるようになったよ。
だからもう心配しないでね。



横を見てみると父さんはまだ目を閉じて手を合わせていた。
きっと二人に話したいことたくさんあったんだろう。
全て話し終えるまで俺は静かに待った。



「!っと……待たせてごめんね」

「大丈夫だよ。話したいこと全部話せた?」

「全部となると時間が足りないからまた今度話に来ることにするよ」

「!……そっか」

「さあ、遅くなる前に次は幸ちゃんのところに行こうか」



幸が亡くなったのは2年前のちょうど…今ぐらいの時期だったかな。
父さんの運転で幸のお墓がある所に着くと先程と同じように花束や掃除道具もろもろを持って向かう。



「!」



前に来たのは母さん達の時と同じ2ヶ月くらい前だったはずなのに…さっきと比べてやけに綺麗だな。

不審に思いながらもお墓の様子を見るとある物に目が止まる。
そこにあったのはシロツメクサで作られた小さな花かんむり。



「シロツメクサか。春には見かけるけどよく夏に生えてたな……」

「………!」

「?ハルどうした」



やけに綺麗に手入れされたお墓。
日が経ち若干萎れているシロツメクサの花かんむり。

それらを見て俺は眉をひそめた。



「…………昔、幸に花かんむり作ってって言われたことあったけど俺わからなくて作れないって言ったら───あいつなんでか作り方知っててドヤ顔で俺が作ってやるって言ってたんだ」

「あいつって、もしかして…」

「どこで知ったのか聞いてみたらさ、図書館とかで調べたってこっそり教えてくれたんだ。なんだかんだ言いながら妹のこと大切に思ってて……」



どこにいても、どんな立場になろうとも、幸のこと大切に思う気持ちは変わらない。
警察に捕まるリスクを負ってまで会いに来てたんだな。



「…あの馬鹿。ここに来れるなら俺にも会いに来いよ……」




……実はさ、知ってたんだ。
あの事件の時の大馬鹿な俺を救けてくれたのはオールマイトでもエンデヴァーでもない。




ハル!!!!




ヒロ、お前だったこと。





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