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 いつもの日常へ(2/5)



雄英敷地内。
校舎から徒歩五分の築三日“ハイツアライアンス”。
雄英の生徒たちが暮らすことになる建物を根津は見下ろしながら頭の中である考えを巡らせていた。



「(今回の寮制は生徒の安全を確保するだけじゃない。依然拭えぬ脅威…内通者を見極めるものでもある)」




「信頼云々ってことでこの際言わせてもらうがよ…今回で決定的になったぜ───いるだろ。内通者」




「(長く漂った不穏な流れを一旦断ち切る為、大っぴらな捜索を避け秘密裏に探っていく。教師だけでなく生徒にまで疑いの目を向けるのは…辛い事だが仕方ない)」




「オールマイトの弱体化が世間に晒され、もう今までの“絶対に倒れない平和の象徴”はいない」

《オールマイトの正体》

《もう戦えない体だったことが判明》




「(象徴の喪失…その影響は時を経るにつれ大きく表れるだろう…とにかく今は奮起・再興の流れが必要だ)」



根津はハイツアライアンスから目線を上げて青空を見上げながら呟いた。



「少なくとも生徒らには明るい未来を指し示していかなくては────…」







1-A専用の寮の前に相澤とハル以外の20名の生徒が集まっていた。
共に再会を喜び合うと相澤から退院時期が直近だったため荷物整理の時間が少ない理由からハルは一日遅れての合流と説明がなされる。
クラスの中でも一番重体だったハルも無事に復帰出来ることを悟った面々は安堵の息を吐いていた。



「さて……!これから寮について軽く説明するが当面は合宿で取る予定だった“仮免”取得に向けて動いていく」

「そういやあったなそんな話!!」

「色々起きすぎて頭から抜けてたわ…」

「大事な話だ。いいか」



そう言い放つ相澤の顔には影が落ちる。
ただならぬ様子に和やかだった雰囲気がピリつく中、相澤はハルと爆豪救出へ向かった轟・切島・緑谷・八百万・飯田の5名を呼んだ。



「この5人は“あの晩あの場所”へ爆豪と水科の救出に赴いた」

「え……」

「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ。色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退がなけりゃ俺は爆豪・水科・耳郎・葉隠以外、全員除籍処分にしてる」



相澤の爆弾発言に皆息を呑んだ。

相澤にも思うことがあったがオールマイトの引退は社会にとって大きなものでしばらくは混乱が続くことが予想される。
また敵連合の出方も読めない中、これ以上雄英から人を追い出す訳にはいかないと考えた上で処分は行わないという結論に至ったのだ。



「行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった12人も理由はどうあれ俺たちの信頼を裏切ったことには変わりない。正規の手続きを踏み正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい」



そう言い切ると相澤くるっと皆から背を向け寮へと歩きながら若干声色高めに言った。



「以上!さっ!中に入るぞ。元気に行こう」



不器用な相澤なりの気づかいだったのだが……



「「「(いや待って。行けないです…)」」」



皆は落ち込み俯いてしまう。
そんな中、徐に爆豪が上鳴を草むらに連れ込んでいく。
なんだなんだと皆の視線が集まる中、草むら内で個性“帯電”によって電気が放出されたかと思うと次の瞬間アホ化した上鳴が姿を現した。



「うェ〜〜〜〜い…」

「「「!!」」」

「バフォッ!!」



突然のことに驚きが隠せない中、そんな上鳴を見て笑いが堪えられない者も。
凍りついていた空気が一気に和やかなものへと変わっていった。

そんな行動をとった爆豪の真意を探る間もなく次は切島に近づくと爆豪デフォルメの人相悪い表情を浮かべながら唐突に5万円を突きつけた。



「え、怖っ!何カツアゲ!?」

「違え。俺が下ろした金だ!いつまでもシミったられっとこっちも気分悪ィんだ」

「あ…え…!?」



救出時に必要だと思ってアマゾンで49,800円で購入した暗視鏡のことを思い出す。
どこで聞いたのかという問いに爆豪は答えることなく言った。



「いつもみてーに馬鹿晒せや」

「………………わりィな」



「うェい…?うェイうェイうェイ!?ふぇ…ふぇ…ふぇいだうェイ」

「だめ…ウチこの上鳴…ツボッフォ!!!」

「あはははは!!!」

「笑いすぎだろ!!ハハハ!!」



「皆!すまねえ…!!詫びにもなんねえけど…今夜はこの金で焼肉だ!!」

「やったー!!」

「マジか!あ、でもハルいねーぞ?」

「また退院祝いのパーティーとかしようぜ」

「ありあり!買い物とか行けるかな?」



「(茶番………も時には必要か…)」





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