◎ 打ち明け話(6/6)
俺もなにか言わなきゃと思いつつ二人の話をさえぎって発言できずにいるのを察したであろう相澤先生からの助け舟。
緊張半分、相澤先生への感謝半分、俺は言った。
「オールマイト。“譲受”は俺が父さんに使用させて欲しいって頼んだんだ」
「……ああ。だが何故───」
「…父さんと無茶しないって約束したその前に緑谷に……自分の身を犠牲にするなって怒られたんだ」
「君がもし死んでしまったら…護れなかったって悲しくて悔しくて一生後悔する…!そんな僕らの気持ちは無視かよ!!」
「これからは自分の身を犠牲にせずに救ける方法を模索しようと思う。だけど……その一方で今回怪我の“譲受”した事はどうしても間違っていたって思えない」
「(緑谷と耳郎の事か……)」
「これからもそんな場面に立ち会うことは何度もある。でもその度に無茶しないって自分に言い聞かせて、救けられるのに救けないなんて判断はきっと出来ない」
「…………」
「!」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
「皆が私を探している。待っているなら……行かなきゃあな…」
「だから思ったんだ。“譲受”を鍛えることで活動上限を引き上げ、身体への負荷を減らせられるようになるかもしれない。そうすれば今回みたいに動けなくなることもなくなるはず。だから……だから使用を許して欲しい!」
「水科少年…」
「…………」
黙って目を伏せながら聞いていた相澤先生がスッと目を開くと俺を見つめた。
「気持ちはよくわかった。そして…水科さん。息子さんの話を聞いて苦渋の決断だったでしょう。心中お察しします。ただ………この話に関して私は賛成出来ません」
「「「!!」」」
許して欲しいと頼んどいてあれだけど予想していなかった返答に度肝を抜かれる。
オールマイトさえ説得すれば良いと思ってたのに相澤先生まで……そんなのどうしたら……!?
「実際の現場でレスキュー隊の到着が遅れる、“回復系の個性”持ちがいない、といった状況はいくらでもある。だがそんな中プロヒーローたちで怪我人の対処などを行って事なきを得る場面だっていくらでもある」
「!」
「?」
父さんはなにかに気づいたのかやれやれと言った具合に小さく笑みを浮かべると相澤先生を見つめる。
だけど俺は相澤先生の真意がわからない。
それはオールマイトも同じみたいで…共に頭に疑問符が浮かんでいた。
「つまりだ」
「「!」」
「“譲受”ありきで今後活動していくことには反対だが、“譲受”を使わない処置方法を覚え、それで対処できない場合のみ“譲受”を使用する。その際に個性使用による行動不能リスクを下げるために予め“譲受”の訓練を行うという名目であれば私は賛成しましょう」
「〜〜〜〜相澤先生っっ!!!」
「はぁあああああ……」
俺は満面の笑顔、オールマイトは頭を抱えて深いため息を吐く。
二極の反応を示す二人に父さんは苦笑いを浮かべていた。
「オールマイトさん。心配なのはわかりますが抑圧した結果、いざと言う時に正しく対処できないと言うのが一番非合理的です。あと───水科の性格上止める方が難しいです」
「!」(ギクッ)
「ならばそれを想定して正しい使い方を学ばせておく。それが一番合理的だと判断しました」
「……相澤くん。君本当によく見てるよ」
そんな相澤先生に根負けしたのかオールマイトも渋々“譲受”の使用に関して同意してくれた。
父さんも含めて、オールマイトや相澤先生も俺の事こんなに心配してくれてたんだ……どうしてそれに気づけなかったんだろう。
本当に…ありがたいな。
俺を信じてくれた人たちに答えるために…
「(もっと強くならなくちゃな)」
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