◎ 戦って勝つか、逃げて勝つか(3/6)
「街への被害などクソくらえだ」
「(何だ…何だ!!)」
「(何だこの───)」
「試験だなんだと考えてると痛い目みるぞ。私は敵だヒーローよ。真心込めてかかってこい」
「「(威圧感は!!!)」」
今までヒーローとしてそばに居てくれた圧倒的な存在感による安心感は、敵として立ちはばかる時には全く別物となって二人に襲いかかる。
教師として教えを受けていてオールマイトを近くで見てきた身であっても会敵したのは今回が初。
襲いくるオールマイトに思わず緑谷は正面戦闘では叶わないから逃げようと提案する。
だが爆豪はその提案を無視して向かってくるオールマイトへと腕を伸ばし臨戦態勢をとる。
「俺に指図すんな!」
「かっちゃん!!」
爆豪の“個性”による閃光弾(スタングレネード)でオールマイトの目をくらませて出来た隙をつくそのままオールマイトへと飛びかかる。
「オールマイト!言われねぇでも最初から───」
オールマイトはすぐに体制を立て直すと爆豪の顔面を正面から掴んで阻止する。
だが全く動じることなく右手を向け、睨みつけながら言った。
「そぉつぉぃあよ(そのつもりだよ)」
「あ痛たタタタタタ(フツー掴まれたら反射的に引き剥がそうとするもんだろ!私をマジで倒す気…)」
爆破を正面で受けるが全く動じることなくそのまま爆豪を地面へと叩きつける。
「しかないようだな!そんな弱連打じゃちょい痛いだけだかな!」
「カッ…ハッ…」
「そして…君もだ緑谷少年!」
「うわ!!(いつの間に僕の前に回り込んで───!)」
「チームを置いて逃げるのかい?」
敵としてオールマイトと相対した時、ふいにヒーロー殺しが脳裏をよぎる。
背筋に悪寒が走る中、とにかくオールマイトから離れるべきだと判断し、フルカウルを発動させて後ろ向きに飛んで距離を取ろうとするが…
「おっと。そいつは…よくない」
「バッ!どけ!!」
「かっちゃ…」
運悪く緑谷の逃げ道と爆豪の攻撃へ向かう軌道が被ってしまい互いに避けられずぶつかってしまう。
その様子に思わずオールマイトもどうしたもんかと思考がよぎる。
片や打倒オールマイト。
片や逃げの一手。
緑谷にとってオールマイトは神にも等しい存在で憧れが強過ぎることによるもの。
一方の爆豪は緑谷に対する焦りを隠せず一人で立ち上がりオールマイトへと向かっていく。
「だから!正面からぶつかって勝てるハズないだろ!?」
「喋んな。勝つんだよ。それが…ヒーローなんだから」
prev|
next