アトラクトライト | ナノ

 打ち明け話(3/6)



賞賛や感謝される光の部分にスポットライトが当たっているが実際はそれだけじゃない。
考えつかないような悪意や価値観に触れる機会が多いが故に常に自身の考え方を問われ、常に死が隣り合わせる。
ヒーローをやっていたからこそわかるヒーローの光に隠れた大きな闇。

そしてそれは自分だけには留まらない。
時には自分の家族や友人すらも巻き込む可能性もある。
ある人が「ヒーローに人並みの幸せは望めない」と言っていたが……それはあながち間違いではないと思う。

それにハルは“譲受”もあり、オール・フォー・ワンからも目をつけられた。
あいつは一敵とは比べ物にならない。
今回はオールマイトがいたがオールマイトが引退してしまった今、もし次に接触した時どうなるのか───……考えただけでも恐ろしかった。



「…………ハル」



病室の扉を開けるとベッドから上半身を起こすハルの姿があった。
俺に気づくとニコッと笑いかけてくれた。
ハルは俺が持つ書類に気づくとすぐにそれが何か聞いてきたから、先程相澤先生から説明を受けた全寮制について話をした。
話していく中、俺の心の中ではまだ迷っていた。



「他の親御さん達の意見を聞いてからの判断になるみたいだけど、学校的には行う方向で検討しているようだ」

「そっか。通学時間かかってたから朝ゆっくり寝れるようになるのはありがたいな〜。あ、でも家……まあ俺が定期的に帰って掃除したら良いか」



ハルは全寮制には前向きで、俺が何も言わなければ全寮制には賛成で話はつくだろう。
きっと今までの俺はそれで終わらそうとした。
それは……ハルと向き合うのが怖かったから。



「…………」




だけどそれじゃ何も変わらない。




「…………ハル。話がある」

「!」




俺が過去に囚われ続けること、

それはきっとハルを俺が過去へ縛り付けているのと同じこと。




「俺はハルの知ってる通りプロヒーローとして活動した過去がある。そこでいろいろな場面に立ち会ってきた。今回の神野の事件ほどではなかったが規模が違うだけで本質的には似たような事件は多くあって、人々を護るために翻弄したヒーロー達が傷つき、中には帰らぬ者となった人もいた」

「……うん」

「普通のヒーローとして活動するにもリスクがつきまとう中…ハルは更に“譲受”がある。オール・フォー・ワンは捕まったが今回な件で公になってしまった。………きっと他のヒーローよりもイバラの道が待っている可能性が高い」




だからこそ現在とそしてハルとちゃんと向き合わなくては。

向き合って話をして本音を打ち明けなければならない。




「数年も放ったらかしにしていた俺が言えた義理じゃないが……ハルには笑って生きて…幸せになって欲しい」

「!」




この子の考える幸せはわからないけど、俺の思う幸せは間違いなく千春やハルと出会えたことだから。
もし同じように思ってくれるなら、いつまでも変わらず仲良く出来る友人や生涯守ろうと決めた大切な人たちに囲まれて穏やかで平和な日々の中、いつまでも笑って生きていて欲しい。




「…………」




握りしめていた拳に落としていた視線をハルへ向ける。




「………ハッキリ言おう。俺は………俺はハルにヒーローの以外の道に進んで欲しい」





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