アトラクトライト | ナノ

 打ち明け話(1/6)









君の残り香を辿り 夢追い人へ

どれだけ過ぎればまた会えるか


空を握る手を解き 伸ばせ先へ

眠りから覚めた今忘るな



遥か晴れ間と春模様













「そういえばこれ轟くんから───」

「!」



緑谷から手渡されたのはタワレコの袋。
取り出してみると…1枚のCDが姿を現す。



「“アイミジン”の新曲だって。すごくいい曲だったよ」



ニッコリと笑いながら緑谷は言った。
俺がCDをじっと見てると気を遣ってくれたのか家に帰るねと言うと病室から出ていった。

一人残された病室の中で曲名の書かれていないCDへ視線を戻す。
普通新曲のリリース時には曲名も発表されるのがほとんどだが今回は曲どころか曲名すら何の情報解禁もなく発売日当日を迎えた。



「……ほんと面白いこと思いつくよな」



水溜まりに青空が反射するジャケットの写真を見て、初めて都会に訪れた時のことを思い出す。
高いビルに囲まれて見える青空はとても狭かったのにガラス貼りのビルに反射した青空がとても綺麗でそれを言うと父さんとは母さんに笑われたっけ。

懐かしいことを思い出しながらケースを開ける。
真っ青なディスクを取り出すとプレイヤーに入れてスイッチをつける。
CDが稼働する音が静かな部屋に響く中、俺はイヤホンをつけて音を待った。



「…………!!」



軽やかでどこか切ないピアノから始まったこのメロディに思わず目を見開く。
慌てて同封されていた歌詞カードを見てみると作曲の欄に“アイミジン”ともう一人“Chiharu”の文字が並ぶ。




「貴方…音楽の才能もあるのね……嫉妬しちゃう」

「千春を真似てるだけだよ。あ、ハル」

「おかえり。ちょっと来て来て!」

「父さんと母さんで作ってみたんだ。聞いてくれるかな?」




いつかヒーローを引退した時に一緒に音楽を作って、それで皆の力になろう。
そう父さんと母さんがよく話していた。
二人の作る音楽が好きでそんな未来が来たら素敵だと思ってたけど……それは叶わなくて……。

ヒーローを引退してから父さんが作る音楽はとても綺麗で素敵だけど、母さんと一緒に作っていた音楽には一切手を出さなかった。
いや……きっと出せなかったんだと思う。




「ハルを見ていると千春を思い出すんだ…忘れようと思ってもあの子の顔を見る度にあの時の気持ちが押し寄せてきてどう接したら良いかわからないんだ……!」




父さんもずっと苦しんでた。

だけど……父さんも必死に母さんの死にも俺にも向き合おうとしてくれている!




「……曲名“Halu”って…安直だなあ……あはは…」





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