◎ 友達だから(4/5)
目が覚めた時にはあんなに悲しくて苦しい気持ちでどうにかなりそうだったのに…診察や検査、事情聴取とこなして行くうちに嫌でも現実に引き戻されていった。
そしてオールマイトの引退を取り上げているニュースや記事を目にする度に言いしれない痛みが胸に襲いかかる。
「ハル」
「…!父さん」
「起きてて大丈夫か?まだ辛かったら寝てていいよ」
父さんと会うのは2年ぶり…幸の葬式以来だな。
手紙のやり取りをしていたとはいえ面と向かって話すとなると…何を話していいのかわからなくて……どこか照れくさい。
でも来てくれて嬉しいな。
嬉しいのに……
「俺は大丈夫だよ。父さんは仕事大丈夫なの?発売日近辺は忙しいんじゃないの?」
それを正直に伝えられない。
笑顔の仮面を着けるのを止められない。
「……仕事は大丈夫だからハルは気にしないで」
「そっか。でも父さんも無理しないでね。俺は大丈夫だから」
大丈夫って何が?
どうして笑ってるんだ?
安心させるための言葉と表情な筈なのに使いすぎて気持ちがわからなくなっていた。
でも一つ言えるのはこのコンボを見せれば相手は安心してくれること。
子供ながらに身につけた自分を守る術だった。
「…………」
「調子はどう?ハル」
病室に一人でいるとからひょこっと緑谷が扉から顔を出す。
そんな緑谷に笑いながら大丈夫だよと声をかけた。
するとそれを聞いた緑谷は安心したように笑ってくれた。
「…………」
ほら。簡単だろ?
こうやって接すれば皆笑ってくれる。
これで良いんだ。きっと────
「……ねえ、ハル」
「ん?」
「…護れなくてごめんね」
「…!」
緑谷から告げられた予期せぬ言葉に思わず目を見開く。
なんで?と聞くと緑谷はゆっくり続けた。
「僕だけがハルの側にいて唯一手が届く所にいたのに……ハルの手を掴めなかった。それどころか僕の怪我をハルに譲受までさせて危険な目を合わせた。全部…僕が弱かったから……」
「それは違う!緑谷は俺の事護ろうとしてくれた!だけど俺がその手を振りほどいて───…」
そう、痛いほどわかってた。
「……皆を護るって大義名分のもと動いたくせに力不足でやられて利用されて…結局はただのお荷物になった。その結果オールマイトも力を使い果たした。……全部───!」
全部俺が悪い。
「!」
「…………」
ダメだ。泣いちゃダメだ。
俺は平和の象徴を奪った一人なんだから泣く権利なんてない。
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