◎ 友達だから(1/5)
あれから数日経つけどハルはまだ目覚めない。
その間、順番にA組の…かっちゃん以外の皆がお見舞いに訪れた。
「爆豪の奴誘ったんだけど行かねーって……」
「まあ…切島あんま気にすんなよ。拉致されてた訳だし外出制限とかあんのかもよ?」
「なら……いいんだけどよ…」
「…ハルはまだ漆黒の世界の中か…」
「(常闇ワールド…)寝てる時って飯とかどうしてんだろ?」
「上鳴。点滴から栄養を取っているんだろう」
「なるほど!障子頭いいな!」
心配した切島くんがかっちゃんに連絡をとってくれてたけどその真意を聞き出すことは出来なかったみたい。
僕もかっちゃんとはあの日以降会ってないな…。
「……ウチのせいでハルが───」
「耳郎ちゃんそれはちゃうよ!」
「そうよ。悪いのは襲ってきた敵なんだから」
「もー!ハルが早く目え覚ませば全部解決なのにー!!」
「おーきーてー!!」
「芦戸さん!葉隠さん!病院内ではお静かに」
“譲受”のことは皆には話してないけど、耳郎さんは自分の怪我をハルがどうにかしてくれたことを察していて自分を責めているみたいだ。
だけど耳郎さんは何も悪くない。
それは皆も同じ意見で、麗日さんを初め女子達が耳郎さんのフォローをしてくれていた。
「仕方ねーから持ってきたけどこれオイラの秘蔵品だからぜってー無くすなよ!」
「峰田!こんなの病院に持ってくるな…!」
「ハルの親父さん来てんだろ?表紙からやべーのに堂々と枕元に置くな」
「尾白も砂糖もホントは見てーんだろ!悪いけどタダでは見せらんないなー……」
「…………」(アセアセ)
「(ハルくん……)」
連日代わる代わるA組の面々が訪れた。
個室で他の患者さんに配慮して騒がしくしないように心がけていたけど、ふとおじさんにとって迷惑になってないか考えてしまうこともあった。
だけどおじさんは優しく笑いながら来てくれた皆にいつもありがとう、と声をかけてくれた。
「まだデクくんは残るん?」
「うん。もう少し時間あるから」
「そっか。私たちはそろそろお暇させてもらうね」
「緑谷くん。また」
今日も皆とお見舞いに来ていた。
もう少しだけ時間があったから残っていると病室の扉が開けられ、そこから姿を合わしたのはオールマイトだった。
「今日も来てたんだね」
「はい!麗日さんや飯田くんたちもさっきまでいたんですが───」
「来る時すれ違ったよ。毎日順番で来ているんだとか?」
そんな話をしているとまた病室の扉が開けられる。
今度は相澤先生が姿を表した。
「オールマイトさんに緑谷。相変わらず仲がよろしいようで」
「いや!相澤くん!これは───」
「浮気現場を目撃されたようなリアクションやめてください。水科の親御さんは?」
「ハルの着替えを取りに家に戻ってます」
「そうか」
どうやら相澤先生やオールマイトも僕ら生徒が帰った後に顔を出していたみたい。
普段あまり集まることの無いメンバーに話題が見つからなくて沈黙が流れる。
だけどそんな沈黙を破ったのは意外にも相澤先生だった。
「お前と言い水科と言い、俺のクラスは問題児ばかりだ」
「!あ…ごめんなさい」
「責めてるわけじゃない。だが自己犠牲と命を捨てることは同義じゃない。緑谷はオールマイトさんに説教を受けたかと思うが───」
「!」(ギクッ)
「水科には俺が説教してやらんとな。その為には早く起きてもらわないとどうにも出来ん」
「(相澤先生……)」
その時だった。
眠っているハルの目から一筋の涙が流れた。
「ハル……?」
ただの生理現象かわからないけど……僕はなんとなくハルに僕らの声が聞こえているんだとそう思えたんだ。
prev|
next