◎ 存在意義(2/5)
先程まで和やかだったムードも白い無機質な建物、薬品の匂いが漂う非日常的な院内に緊張が高まる。
ハルに会えるのはすごく楽しみで嬉しい。
だけどまだ目覚めてないと聞いて…心配なのも事実。
「着いたな」
「うん…」
「…入ろうか」
コンコンコンとノックをするとはい、と一言男性の声が聞こえる。
相澤先生やオールマイトでもないとすると……もしかして!
病室の扉を開けるとベッドに横たわるハルの姿とどことなくハルの面影がある男性の姿。
直感的にわかった。この人はハルのお父さんだ。
ハルのお父さんは僕たちに気づくとニコッと笑いかけてくれた。
「お見舞いに来てくれたんだね。ありがとう」
「初めまして!A組のクラス委員長の飯田天哉です」
「同じくA組の轟焦凍です」
「み、緑谷出久です!」
自己紹介をするとハルのお父さんの中で何かが繋がったのかああ、と短く漏らすと納得したような素振りを見せる。
僕らがその様子に首を傾げていると謝りながらハルのお父さんも自己紹介を始めた。
「ハルの父親の義孝です。皆のことハルから聞いてるよ。いつも仲良くしてくれてありがとう」
「!」
ハルの断片的な過去ではお父さんとの関係がうまくいっていないように見えたけど、実際はそんなことなくて二人なりにコミュニケーションを取れていたんだ。
それに気づいて少しだけ安堵の息を漏らした。
おじさんは僕らの顔を見ていく中で轟くんの顔をじっと見つめるとニッと笑った。
「轟……エンデヴァーのところの焦凍くんか!大きくなったな。冬美ちゃんや夏くんは元気か?」
「あ……はい」
「轟くん顔見知りなのかい?」
「…………すみません。俺は記憶になくて…」
「俺と会ったのはまだこんなに小さい時だったからな」
おじさんはそう言いながら親指と人差し指で豆粒サイズの大きさを示す。
流石にそんなわけが無いとは思いつつ、温かい雰囲気に釣られて思わず笑顔が零れた。
ハルの人を惹きつける温かい雰囲気はお父さん譲りなんだね。
「あの、ハルの様子は────」
「外傷はリカバリーガールに治癒してもらってほとんど治ったけどまだ目が覚めなくて」
確かに見える範囲の怪我はほとんど無い。
それに最後に見た時より顔色もだいぶん良くなってる……よかった。
だけどならどうして目を覚まさないんだろう…?
「どうやら精神的なことが起因しているみたいだ」
「「「!」」」
「……だから声をかけてあげてくれないかな。きっと友達の言葉ならハルにも届くと思うから」
あの時の出来事は僕でも来るものがあったのに、実際の当事者であるハルはもっと辛い思いをしているのは当然だ。
最近寝不足が続いていた理由が今になってなんとなくわかった気がする。
きっと夏はハルにとって特別なもので、良くも悪くもそれが影響していたんだと今ならわかる。
近くにいたはずなのに……どうして気づいてあげられなかったんだろう。
いつも救けてもらっているのにどうして救けてあげられなかったんだろう。
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