◎ 始まりの終わり 終わりの始まり(4/6)
「おかえり。オールマイト…大変だったみたいだね。出久も帰り道大変だったでしょ」
「……うん…」
ハルとかっちゃんの救出作戦。
瀕死をおってしまったハルとワン・フォー・オールを失ったオールマイト。
短時間の間にいろいろな事がありすぎて流石に疲れた……。
この先、どうなるのか。
僕の行動は本当にあれで良かったのか。
「(オールマイト…………)」
手に持つスマホが震えていてハッと意識を取り戻す。
僕あのまま寝ちゃってたんだ……一体誰からの連絡だろう────…
「!!!」
ディスプレイの表示を見て誰か確認するとバタバタと音を立てながら慌てて部屋から出ていく。
台所ではお母さんが晩ご飯を作ってくれているらしく良い匂いがしていて、引き止められたけどそれに謝って僕は家を飛び出た。
向かったのは…ワン・フォー・オールをオールマイトから譲渡してもらったあの海岸。
そこには怪我の手当てを受け包帯ぐるぐる巻きで痛々しいトゥルーフォームのオールマイトが立っていた。
「お!やっと来た!」
「オールマイト…!!」
「遅いよもーー!!!」
「オールマイト…」
互いに駆け寄り合い、無事を喜び熱い抱擁でも交わすのかと思われたがそれは呆気なく裏切られる。
「テキサス…
SMASH!」
「!?」
トゥルーフォームのまま、オールマイトの拳が僕の右頬にクリーンヒットし思わずその勢いのまま砂浜へと倒れ込む。
だがそんな僕に構うことなくオールマイトは続けた。
「君ってやつは本当に言われた事守らない!!全て無に帰るところだったんだぞ。全く誰に似たのやら……」
「…………」
殴られた頬がズキズキと痛む。
痛いんだけど………
「緑谷少年。私ね事実上の引退だよ。もう戦える体じゃなくなってしまった」
「……!」
「……フンッ!!!」
オールマイトはいきなりマッスルフォームへと変身する。
見慣れたNo.1ヒーローオールマイトの姿でギプスで固定されて動かせない右腕とは反対の自由の効く左腕で殴る仕草を何度かする。
だがすぐに血を吐きながらトゥルーフォームへと戻ってしまった。
「ワン・フォー・オールの残り火は消え…おまけにマッスルフォームもろくに維持出来なくなってしまった。だと言うのに君は毎度毎度、何度言われても飛び出して行ってしまうし…!何度言っても体を壊し続けるし!!だから今回!」
腕が振り上げられる。
怒られる、殴られると思って固く目を瞑った。
「君が初めて怪我せず窮地を脱したことすごく嬉しい」
オールマイトに優しく抱きしめられる。
「これから私は君の育成に専念していく。この調子で…頑張ろうな」
憧れのヒーローに褒めて貰えた。
嬉しい。嬉しいはずなのに……涙が溢れてきて止まらない。
「うっ…オル…オールマイト僕っ……ううっ」
「君は本当に言われた事を守らないよ。その泣き虫なおさないとって言ったろう」
「うわあああっ……」
頬に残る弱々しい痛みが僕に“オールマイト”時代の終幕をじんじんと告げていた。
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