◎ 始まりの終わり 終わりの始まり(5/6)
病院内。
ハルの処置に当たっていた医師とリカバリーガール、そして父親の義孝と担任の相澤の姿があった。
「ヤマは越えて義晴くんの容態は安定しました。後は体力が回復次第、徐々にリカバリーガールによる治癒を行っていく予定です」
「わたしゃに任せなさい」
そんな二人に義孝たちも安堵の表情を浮かべる。
だが医師はしかし…と少し言葉を濁す。
「……拉致に敵との接触、それと生徒の証言によれば───敵の“個性”により過去のトラウマが掘り起こされた可能性があります」
「……!」
「15歳の少年にとってあまりにもショッキングな出来事が続いています。怪我は回復したとしても…精神的なショックによりしばらく目を覚まさない可能性は否めません」
医師の言葉に義孝は手を握りしめると俯く。
「目が覚めた後は我々もメンタルケアを行います。ただ───…周りの人の支えや理解も彼には必要です」
「不安な気持ちはわかるが焦らずにゆっくり進もう。あの子も頑張ってる。だからあんたも頑張りな。その為に戻って来たんだろう」
「…………」
医師とリカバリーガールの言葉を聞いた義孝は少し俯いたあと、ばっと顔を上げると力強く頷く。
すると今度は相澤が口を開く。
「見舞いは制限した方が良いですか」
「今の時点ではICUに入っているので面会は出来ない。それに世間も落ち着くまでは安全を考慮して制限した方が良いと思います」
「(まあそうだな。A組連中には伝えとかないと…)」
「ただ」
「!」
「意外と意識がない時の記憶って残ってるんですよ。どんな話をしていたかとか、誰かが手を握っててくれたとか。なので普通の病室に移る頃にはその制限はなくして良いと思います。きっと…義晴くんを心配している子もいると思いますから」
「…わかりました」
自身の身の危険を顧みずに救けようとした奴もいれば、その事実を知りながら賛成はしないがその行いを止められなかった奴もいる。
プロヒーローとして、教師として見た時、あいつらの行動は決して許されるものでは無い。
例えそれが大切な仲間のためと言えども。
「(だが…………その思いやりが誰かの心を救うこともある、か)」
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