◎ ワン・フォー・オール(3/3)
「煩わしい」
オール・フォー・ワンはそう言うと“個性”で周りにいたプロヒーロー諸共吹き飛ばし一蹴していく。
「精神の話はよして現実の話をしよう」
「筋骨発条化」
「瞬発力」×4
「膂力増強」×3
「増殖」
「肥大化」
「鋲」
「エアウォーク」
「槍骨」
持つ個性は掛け合わせて最大限まで力を引き出した右手をオール・フォー・ワンは携える。
「今までのような衝撃波では体力を削るだけでは確実性がない。確実に殺す為に今の僕が掛け合わせられる最高・最適の“個性”たちで君を殴る」
先程、手を合わせたようやく確信を得たよ。オールマイト。
君の中にもうワン・フォー・オールはない。
君が使っているのは余韻…残りカス…譲渡した後の残り火だ。
そしてその火は使う度に弱まっている…。
もはや吹かずとも消え行く弱々しい光…。
「緑谷出久」
「!」
「譲渡先は彼だろう?資格も無しに来てしまって…まるで制御出来てないじゃないか。存分に悔いて死ぬといいよ。オールマイト。先生としても君の負けだ」
オールマイトとオール・フォー・ワンの右手拳がぶつかり合う。
余りの威力に二人を中心に広い範囲に衝撃が伝わり建物が音を立てて崩壊していく。
オール・フォー・ワンの“衝撃反転”によってオールマイトの放った力は全て跳ね返り不利かと思われたが、オールマイトは言葉を紡いだ。
「そうだよ。先生として…叱らきゃ……いかんのだよ!
私が叱らなきゃいかんのだよ!!!」
「……なる程。醜い」
吹かずとも消え行く───…弱々しい残り火。
抗っているのか。
役目を全うするまで絶えぬよう必死で抗っているのか。
「限界だーって感じたら思い出せ」
「(“象徴”としてだけではない…!!お師匠が私にしてくれたように…私もまだ彼を育てるそれまでは───)」
空いていたオールマイトの左がマッスルフォームへと変化していく。
「そこまで醜く抗っていたとは…誤算だった」
「(まだ死ねんのだ!!!!)」
最後の一振り。
右手をお守りに使って、右手のパワーを左手に注いで攻撃を仕掛けたのだ。
だが───…
「らしくない小細工だ。誰の影響かな。浅い」
奇しくもオール・フォー・ワンによって弾かれてしまう。
そんな彼にオールマイトは言い放った。
「そりゃア…」
「!」
「
腰が入ってなかったからな!!!」
腕から、口から血が溢れる。
とっくのとうに限界は迎えていた。
それでも体を、心を動かす原動力。
それが着火剤となりワン・フォー・オールの炎の勢いが増す。
「何人もの人がその力を次へ託してきたんだよ。皆の為になりますようにと…一つの希望になりますようにと。次はおまえの番だ」
「頑張ろうな、俊典」
「
おおおおおおおおお」
さらばだ。
オール・フォー・ワン。
「
UNITED STATESOF SMAAASH!!!」
さらばだ。
ワン・フォー・オール。
◇
その瞬間、微かに灯っていた炎は煙だけ残して消えてしまった。
「……オール…マイト……?」
…もう出し切ってしまった。
ワン・フォー・オールは…消えてしまった。
「……っ…!!」
“平和の象徴”はもういない。
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