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 ワン・フォー・オール(2/3)



「全て中位とはいえ…あの脳無たちをもう制圧したか。さすがNo.2にのぼりつめた男」

「貴様…」



エンデヴァーの瞳はまっすぐとオールマイトを捉える。
ボロボロでひょろひょろなNo.1ヒーローとして見る影もないオールマイトの姿に腹の奥から怒りが込み上げる。



「(貴様を超えようと研究を重ねてきた…!)」




重ねる程に痛感する。

貴様との差が…貴様の背中が…!!



絶望が!!

俺を────…




「やめて下さい!まだ五つですよ………」

「おまえのせいだ……!」

「捨てられるわけねえだろう」




なんだそのっ情けない背中は!!!

「…………」



心から叫ぶエンデヴァーをオールマイトはまっすぐ見つめる。



「応援に来ただけなら観客らしくおとなしくしていてくれ」



その様子を見ていたオール・フォー・ワンが邪魔だと言わんばかりに攻撃を仕掛けようとするが、それを阻止すべくエッジショットが飛び込んでいく。



「抜かせ破壊者。俺たちは救けに来たんだ」



エッジショットの言葉通り、ハルだけではなくジーニストやMt.レディを初めとする戦闘不能になったプロヒーローたちをシンリンカムイが、そして瓦礫に挟まれた女性はヘルパットが救助していく。
ヘルパットはオールマイトに向かって言い放った。



「俺達にはこれくらいしか出来ませんが貴方が背負うものを少しでも貸してくださいよ。オールマイトさん」

「ヘルパット…」

「あの邪悪な輩を止めてください…それが出来るのは貴方だけだ。皆、貴方の勝利を願っている」




「勝て!!」

「勝てや!!」

「「オールマイトォ!!!」」




「どんな姿でも貴方は皆のNo.1ヒーローさ!」




「八木俊典?」

「面白い奴だよ。イカれてる。いわく…犯罪が減らないのは国民の拠り所がないからだと、この国には今“柱”がないんだって。だから自分がその柱になるんだって」





「皆、貴方の勝利を願っている!!」








「…………」



風が吹き荒れる暗闇の中に灯る小さな光。
それを目印に進んでいくとそこにいたのはトゥルーフォームのオールマイトと小さく燃える炎。
オールマイトは必死にその炎を消さんと言わんばかりに小枝をくべ、やせ細った身を呈して風から炎を守っていた。



「(ワン・フォー・オールが……)」



その炎が直感的にワン・フォー・オールだと悟り近づこうとした時、誰かに腕を掴まれて引き止められる。
振り返った先にいたのは端正な顔立ちで黒髪ハーフアップの女性。
ヒーローのコスチュームをまとっているその女性は俺を見るや否や目を見開き少し驚いた表情を浮かべていた。
だが小さく微笑むと首を横に振った。



「これは俊典の戦いだ。私たちは何も出来ない」

「あなたは……?」

「懐かしいなぁ…息子もだが孫もよく似ている……ああ失礼。私は志村菜奈」

「志村菜奈…死柄木の……!!」

「……君と会うのは2度目だね」

「(2度目…?)あ!」



体育祭の時に緑谷と心操が戦った時に見た人影の一人と目の前の女性が重なると本能的に察した。
この人は……ワン・フォー・オールの継承者の一人だ。



「君の“個性”と“ワン・フォー・オール”が共鳴したのか…お陰で私もここに来れた」

「(共鳴?)」

「今はまだ分からなくていいさ」



そう菜奈さんは笑う。
そしてオールマイトへと視線を戻した。



「私たちはここから見守ろう」




俊典の…オールマイトの戦いの終局を!





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