◎ 君だってわかるだろう(6/6)
時間は流れて夜。
どうするべきか悩んだ。
蛙水さんの言うことは最もで僕らのしようとすることはきっと許されることではない。
だけど……
「……!緑谷……」
約束通り病院の前には切島くんと轟くんがいた。
そして…今回の作戦の要である八百万さんも僕と一緒に来てくれた。
だけどまだ悩んでいるみたいで俯いていて、そんな八百万さんへ切島くんがどうするか聞こうとした時だった。
「待て」
飯田くんが僕たちを引き止めた。
「………何でよりにもよって君たちなんだ…!俺の私的暴走をとがめてくれた…共に特赦を受けたハズの君たち二人がっ…!!何で俺と同じ過ちを犯そうとしている!?あんまりじゃないか…。こんなことハルくんも望んではない……」
僕らが君にかけた言葉を言わせてしまってごめん。
確かにハルもあの時は一緒に君をとがめた。
飯田くんの言う通りハルはこんなこと望んでないかもしれない。
だけど…ハルが僕と同じ立場だったらきっと同じ選択をすると思うんだ。
だって…ハルも救けてしまう人だから。
「…………」
「俺たちはまだ保護下にいる。ただでさえ雄英が大変な時だぞ。君らの行動の責任は誰が負うのか知ってるのか!?」
「飯田くん違うんだよ。僕らだってルールを破っていいだなんて……」
僕が言い切る前に鈍い音が響き左頬が痛む。
「俺だって悔しいさ!!心配さ!!当然だ!!ハルくんが“個性”を使ったと聞いて…不安になったさ!!だが俺は学級委員だ!クラスメイトを心配するんだ!!爆豪くんやハルくんだけじゃない!!君の怪我を見て床に伏せる兄の姿を重ねた!!」
「!」
「君たちが暴走した挙句、兄のように取り返しのつかない事態になったら…………っ!!僕の心配はどうでもいいっていうのか!!僕の気持ちは…………どうでもいいっていうのか……!!」
あの飯田くんが僕を殴ってまで止めようとしてくれている。
……そうだね。
君はとても優しい人だから今僕にぶつかってくれる。
だからこそ僕は両肩を掴んで僕を見つめる飯田くんの顔を見ることが出来なかった。
「飯田くん…」
「飯田」
そんな中、轟くんが声をかけた。
「俺たちだって何も正面きってカチ込む気なんざねえよ」
「…………!?」
「戦闘なしで救け出す」
「ようは隠密行動!!それが俺ら卵のできる…ルールにギリ触れねえ戦い方だろ」
「私は轟さんを信頼してます…が!!万が一を考え私がストッパーになれるよう…同行するつもりで参りました」
「八百万くん!?」
「八百万!」
「…………」
「緑谷。俺が動けば救けられるなら動かない訳にはいかないだろ」
「僕も…自分でもわからないんだ…手が届くと言われて…いてもたっても言われなくなって…」
トップヒーローは学生時から逸話を残している。
彼らの多くがこう結ぶ。
「救けたいと思っちゃうんだ」
考えるより先に体が動いていた!と。
「………………平行線か…」
飯田くんが僕らの気持ちを聞いて目を瞑る。
実際の時間は数秒足らずのはずなのに時が止まったような錯覚に陥るほど長く感じた。
深呼吸をして、何かを決心したような瞳を携えた飯田くんは言ってくれた。
「───…ならば────…っ。俺も連れて行け」
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