◎ 君だってわかるだろう(4/6)
「へ?」
突然の切島くんの提案に思わず情けない声が漏れる。
だけど他のみんなも予想していなかったのかぽかんとした顔で切島くんを見つめた。
当の本人はジョークでもなんでもない真面目な様子で続けた。
「実は俺と…轟さ、昨日も来ててよォ…そこでオールマイトと警察が八百万と話してるとこ遭遇したんだ。敵の一人に発信機を取り付けていてその信号を受信するデバイスをオールマイトに渡してたんだ」
「…………つまりその受信デバイスを…八百万くんに創ってもらう…と?」
それを聞くと飯田くんは苦い表情を浮かべた。
それもそのはず…ヒーロー殺しの時に勝手な行動を取り、マニュアルさんを始め周りに心配をかけてしまった経験のあった飯田くんだからこそ思うことがあったんだと思う。
切島くんに対して大きな声で叱った。
「
今回はプロに任せる案件だ!生徒の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!」
「んなもんわかってるよ!!でもさァ!何っもできなかったんだ!!ダチが狙われてるって聞いてさァ!!なんっっもできなかった!!しなかった!!
ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!!」
「切島落ち着けよ。こだわりは良いけど今回は…」
「飯田ちゃんが正しいわ」
飯田くんに続き、上鳴くんと蛙水さんも切島くんを止めようと説得する。
切島くんも飯田くんの言ってることは正しいことは理解していた。
だけど……きっと切島くんも悔しい思いを抱えているからこそ曲げられないんだ。
「なァ緑谷!!まだ手は届くんだよ!」
その気持ちがわかるから切島くんから伸ばされた手を否定することができなかった。
「ヤオモモから発信機のヤツもらって…それ辿って…自分らでハルと爆豪の救助に行くってこと……!?」
「敵は俺らを殺害対象と言い、ハルと爆豪は殺さず攫った。生かされるだろうが殺されないとも言い切れねえ。俺と切島は行く」
「ふっ───
ふざけるのも大概にしたまえ!!」
轟くんの発言に飯田くんはまた声を荒らげる。
だがそんな飯田くんを制止するかのように障子くんが一歩前に出た。
「待て落ち着け。切島の“何も出来なかった”悔しさも轟の“眼前で奪われた”悔しさもわかる。俺だって悔しい。だが、これは感情で動いていい話じゃない」
「「……」」
「オールマイトに任せようよ…戦闘許可は解除されてるし」
「青山の言う通りだ…救けられてばかりだった俺には強く言えんが…」
「みんなハルちゃんと爆豪ちゃんが攫われてショックなのよ。でも冷静になりましょう。どれ程正当な感情であろうとまた戦闘を行うというなら───ルールを破るというならその行為は敵のそれと同じなのよ」
蛙水さんの言葉が重くのしかかる。
それは僕だけではなくみんなも同じで病室内が重々しい雰囲気に包まれるが、その沈黙を破るように医師が僕の診察時間が近いことを知らせにやってきて、とりあえずはお開きとなった。
みんなが出ていく中、切島くんは最後まで残って僕に小声で言った。
「八百万には昨日話をした。行くなら即行…今晩だ。重傷のおめーが動けるかは知らねえ。それでも誘ってんのは───」
おめーが一番悔しいと思うからだ。
「今晩…病院前で待つ」
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