◎ 君だってわかるだろう(3/6)
更に翌日。
僕はあの後すぐ合宿所近くの病院に運ばれ、二日間気絶と悶絶を繰り返し高熱にうなされた。
その間リカバリーガールが来て治癒を施してくれたり警察が訪ねてきたみたいだけど何一つ覚えちゃいなかった。
ベット横のチェストの上には「起きたら食べて電話ください」と母さんの時で書かれたメモと切られたリンゴがあった。
「出久…もうやだよ。お母さん心臓もたないよ…」
もう心配かけないって決めたのに……。
「…………洸汰くん…無事かな…」
「あー緑谷!!目ぇ覚めてんじゃん!!」
「え?」
病室の扉から上鳴くんが現れたかと思うと後ろからゾロゾロと他のA組のみんなもやってきた。
「テレビ見たか!?学校いまマスコミでやべーぞ」
「春の時の比じゃねー」
「メロンあるぞ。みんなで買ったんだ!デカメロン!!」
「迷惑かけたな緑谷…」
謝る常闇くんに首を横に振る。
だって…迷惑かけたのは僕の方もだ。
A組みんなで来てくれたの?という僕の問いに飯田くんが答えてくれた。
「いや…耳郎くん葉隠くんは敵のガスによって未だ意識が戻っていない。そして八百万くんも頭をひどくやられここに入院している。昨日丁度意識が戻ったそうだ」
「……そうなんだ。耳郎さんや葉隠さんは外傷とかはなかったの…?」
「…………耳郎さん、本当は重傷を負っていたよ」
「「!!」」
眉をひそめ言いにくそうな表情を浮かべた青山くんの発言に他のみんなも知らなかったのか目を丸くし驚きを隠せない様子だった。
そんな青山くんに麗日さんは言った。
「でも一昨日行った時には耳郎ちゃん怪我してへんかったよ!?リカバリーガールが治癒したって話も聞いて───」
「ハルくんが救けてくれたんだ」
「「「!!」」」
「敵に襲われて致命傷を負って動けないところにハルくんが来てくれて…。耳郎さんの手を握って急に光ったかと思うと…傷が跡形もなくなくなっていたんだ…」
何も知らない人からすると魔法のような話に戸惑いを隠せない子もいた。
だけどハルの“個性”のことを知ってる僕を始め、飯田くんと轟くんもその時の状況をなんとなく理解したんだと思う。
眉をひそめて俯いていた。
あの時顔色悪かったのは…耳郎さんの怪我を“譲受”していたから…。
もしもハルがいなかったら今頃耳郎さんは────…
「……緑谷、飯田、轟。何か心当たりがあるのか?」
「あ………」
明らかに様子のおかしい三人に対して障子くんは問いかける。
だけど僕はその問いに対して答えることが出来ずにいると飯田くんが代わりに答えてくれた。
「ハルくんの許可なく僕らの判断で勝手に話すことは出来ない。みんなすまない。…話を戻すが───今来ているのは耳郎くん、葉隠くん、八百万くんの3名を除いた……」
「……“15”人だよ」
「ハルと爆豪いねぇからな」
「ちょっ!轟…」
「…………」
…本当にハルもかっちゃんもいないんだ。
あれは夢なんかじゃなくて…現実だったんだ。
「オールマイトがさ…言ってたんだ。手の届かない場所には救けに行けない…って。だから手の届く範囲は必ず救けるんだ…」
涙で視界がぼやける。
だけど泣いちゃダメだ。
僕に泣く資格なんてないんだ。
「僕は…手の届く範囲にいた。必ず救けなきゃいけなかった…!僕の“個性”はその為の“個性”なんだ…!相澤先生の言った通りになった…」
「おまえのは一人を救けて木偶の坊になるだけ」
「体……動かなかった…」
「じゃあ今度は救けよう」
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