◎ 晴の守護者戦(2/7)
柵で囲われたリングの中にチェルベッロの2人と了平、ルッスーリアが入るとまずは持っている晴のハーフボンゴレリングが本物であるかどうかの確認が行われる。
本物であることを確認するとチェーンが渡され、戦闘中は原則リングを首から下げるよう指示が出される。
相手を倒しこのリングを奪ったものが勝者となるのだ。
戦闘準備が進むにつれて空気がピリつく中、了平は着ていた上着を脱ぎ半裸になった時だった、ルッスーリアは声色高めに言った。
「あらぁ?んまぁ!よく見りゃあなたいい肉体してるじゃない!!好みだわ〜〜〜!」
「なに!?」
「!あいつ今…なんて言いました!?」
「さ…さあ…?」
「……」
「お持ち帰り決定」
「さっきから何言ってるかわからんがオレは正々堂々戦うだけだ」
そう言いながら了平はいつでも戦闘態勢に入れるようボクシングの構えでルッスーリアを見つめる。
するとルッスーリアは少し小馬鹿にしたように笑いながら自身も同じように上に羽織っていたヴァリアーの団服を脱ぐ。
「んまあそのポーズはボクシングかしら!またいけてないわねー」
「なにぃ…!!」
「このルッスーリアが立ち技最強のムエタイで遊んであげる」
了平に負けじ劣らずの筋肉質で屈強なルッスーリアの体が姿を現す。
ボクシングの構えを取る了平とムエタイの構えを取るルッスーリアの2者を見ながらリボーンはやっぱりかと言葉を漏らす。
「歴代ファミリーを見ても晴の守護者はみな強力な拳や足を持っていた。ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となる。それが晴の守護者の使命だからな」
「では晴のリング。ルッスーリアVS笹川了平勝負開始!!」
チェルベッロから開始の合図が告げられた次の瞬間、コート上に着いていたライトがパッと光る。
暗闇を照らすなど生易しいものではなく、あまりの眩しさにリングが光っているかのような、目を開けることすら困難な程の光量が降り注ぐ。
「この特設リングは晴の守護者の決戦に相応しく設計された擬似太陽により照らしだされる日輪のコロシアムなのです」
目を開けることすら困難な葵達に対してリボーンは自分のサングラスを貸す。
それをかけることによってなんとかリング内の様子を確認できるようにはなったが、サングラスを持っておらずライトの真下にいる了平は未だに光で目が開けられずにいた。
だがそれは相手のルッスーリアも同じと思っていた矢先、了平の腹に鋭い蹴りが入る。
「ああ!!ヴァリアーの人はサングラスつけてるから自由に動けるんだ!!これじゃ勝負にならないよ!!お兄さんにもサングラスを!!」
「勝負中の守護者との接触は認められません。もし行えば失格としリングを没収します」
「そんな…」
「キタネーぞ!!」
まともに目を空けられない状況で闇雲にパンチをする了平を弄ぶかのようにルッスーリアは声をかけながら頬に拳を叩き込む。
その勢いに吹き飛ばされ、リングを囲むように張り巡らされているロープに体が当たった時だった、煙と何かが熱されるような音ともに了平の叫び声が響き渡る。
「笹川さん!!」
「ロープは電熱の鉄線で何百度にも熱せられています」
「そんな…!!メチャクチャだよ〜〜!」
火傷を負い跪く了平を見下ろしながらルッスーリアは舐めずる。
「ん〜〜♡私の完璧な理想の肉体に近づいてきたわ〜〜。私の思う究極の肉体美とは朽ち果てた冷たくて動かない肉体♡」
それって死体のことではと気づいた葵達は顔を青く染める。
だが了平もやられっぱなしでなく、反撃と言わんばかりに立ち上がると目を瞑ったままルッスーリアの話し声を頼りに拳を叩き込む。
するとその拳は見事ルッスーリアに決まり上方へ吹き飛んでいく。
「当たった!」
「す…すごいパンチだ」
ツナと山本が嬉しそうに言う隣で葵は難しそうな表情を浮かべていた。
そしてヴァリアー側もにやにやと怪しげな笑みを浮かべていた。
「(今のパンチは当たったんじゃなくて、ルッスーリアが“当たりに行ってた”。ルッスーリアは一体何を……)」
「いじめちゃいや〜〜ん♡」
ルッスーリアは空中でくるりと身を翻し、体制を立て直すとそのまま了平目掛けて落ちていく。
その様子に気づいた了平はなにっと声を漏らしたが、空中にいて身動きが取れないことを確信し反撃のパンチを繰り出そうと左腕を伸ばす。
「もらった!!」
「ムフ」
だがルッスーリアは怪しく笑う。
そして了平の拳がルッスーリアの膝に当たった瞬間、左腕がとてつもなく固いものにぶつかったような鈍い音を立て、血が流れていく。
衝撃に耐えきれなかった了平が後ろに吹き飛ばされるがその先にあるのは何百度にも熱せられた鉄線。
了平の悲痛な叫びが響き、力なく地面へ倒れ込む。
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