◎ 夜空のボンゴレリング(4/5)
「ん……」
みんなと別れ眠っていつもの様に朝を迎える。
一晩寝て、冷静になると昨日の非現実的な出来事が脳裏を過ぎる。
微かに手が震える、心の奥底では……全部放り投げて逃げてしまいたい、そんな弱虫な自分が顔を出す。
「ツナー。起きてる?」
コンコンとノックと共に葵の声がツナの耳に届く。
薄らと開けられた扉から覗く葵と布団から顔を出しているツナの目が合う。
すると葵はニコッと笑いながら言った。
「おはよう、ツナ。朝ごはん出来てるって奈々さんが───」
「お、おはよう…」
「?顔色真っ青だけど…大丈夫?体調悪い?」
「いや!その……昨日のこと思い出しちゃって────」
「…………」
指には大空のハーフボンゴレリング。
壁には9代目からの勅命が額縁に入れて飾られていた。
恐らくリボーンがやったのだとすぐにツナは察した。
不安そうな表情を浮かべるツナに近づくと顔の高さが合うように葵はしゃがむ。
そしてまたニッと笑った。
「ツナ、大丈夫だよ」
「!」
「ツナはひとりじゃない。獄寺も山本も笹川さんも…オレだっている!みんなで力を合わせたら───きっと大丈夫だよ。こうやって何度も乗り越えてきたんだから」
そんな葵の姿を見てツナはハッとする。
確かに急に命懸けの戦いに自分たちは巻き込まれた。
だけど目の前にいる葵は運命だとか、リングに選ばれたとか、もっと大きな何かを抱えさせられている。
自分たちよりももっと不安で怖いはずなのにいつもの様に笑顔で安心させようとしていた。
「………ごめん。葵」
「?なんでツナが謝るんだ?」
「オレもしっかりしなくちゃって…あはは……」
「……あ!そうそう!さっきリボーンとも話してたんだけど今日は一緒に学校行こうよ」
「でも修行が────」
「リボーンにも了承もらってるからご心配なく!久々に皆に会えるな〜……じゃあ準備できたら下降りてきてね」
バタバタと降りていく葵を引き止める暇もなく取り残されたツナは言っちゃったと呟く。
身支度を済ませて、葵やランボ達とともに朝食を食べると奈々に見送られて家を後にする。
その道中、気分転換に学校に行こうとしていま山本と獄寺に会い、四人で並中へ向かった。
教室への扉を開くと見慣れたクラスメイト達。
1週間近く休んでいたツナ達に対してサボりか?と冗談を零す些細な会話がなんだかとても懐かしく感じられた。
「葵君、ツナ君、おはよ。風邪治ったんだね」
「京子ちゃん!」
「京子ちゃんおはよう」
「昨日はゴメンね。フゥ太君達とはぐれちゃって」
「気にしなくていいよ!はぐれたあいつが悪いんだから!」
だが京子は元気がなく少し俯いていた。
その様子に違和感を覚えた二人はどうしたのか声をかけると京子はぽつぽつりと話し始める。
「最近お兄ちゃん、ボクシング以外のことに夢中みたいで様子が変なの。何か心当たりある?」
「!」
「い゛っ」
了平は今回の件を京子には伝えておらず、自分たちが巻き込んでしまったせいで京子に心配をかけてしまっていると二人は顔を青くする。
京子には気づかれないよう気をつけながらツナと葵はこの件の事を話すか話さないかアイコンタクトして探りあった。
「お兄ちゃんたらコロネロ君まで連れ出してるみたいで───」
「え!?京子ちゃん、コロネロ知ってんの〜!!?」
「え?だってもうずっとうちに泊まってるよ?」
「えーー!!京子ちゃんちに泊まりーー!!?」
「うん。一緒にごはん作ったり、遊んだり、お風呂入ったり」
「なっ!!(京子ちゃんとお風呂ー!!?)」
裸の京子とコロネロが一緒にお風呂に入る様子を妄想したツナは思わず鼻血を吹き出す。
だがその一方で葵は無邪気に笑いながら京子に言った。
「そうだったんだ!なんか弟が出来たみたいで楽しそうだな」
「そうなの!私末っ子だから新鮮で」
「…………(なんか…オレ恥ずかしくなってきた……)」
「…でも考えてみたら休んでた葵君達が知ってるはずないよね。変な事聞いてごめんね」
「「!」」
そうは言いつつも心配そうに俯く京子。
そんな京子を見て一瞬の沈黙の後、ツナと葵は頷き合うと口を開いた。
「京子ちゃんごめん……!!」
「実は笹川さん────「
相撲大会だ!!」
突然背後から聞こえてきた声に振り向くとそこには笑顔を浮かべる了平の姿。
「獄寺や山本達と相撲勝負をするから特訓しているだけだ」
「お兄ちゃん!!」
突然2年生の教室に現れた了平にツナと葵は驚きを隠せない。
だが了平はそんな二人に構うことなく教室内に入ると二人の肩にがしっと腕をかけた。
「葵や沢田も出場するんだぞ。コロネロも相撲を見るのが好きでな」
「え!?はあ!?」
「なんだ。そーだったの?」
「!さ、笹川さん!せっかく時間あるならシコふみに行きましょうよ!」
「お!葵、妙案だな!沢田もいくぞ!!」
「え!?ちょっと!!」
prev|
next