明日晴れるかな(指輪編) | ナノ

 夜空のボンゴレリング(3/5)



ヴァリアーの面々も立ち去り、張り詰めていた緊張の糸がほどけていく。
家光もツナたちへ先に帰っておくよう伝えるとバジルたちを連れてどこかへ行ってしまった。

取り残された葵やツナたちは先程起こった突然の出来事に放心状態になっていた。
そんな時、おもむろにリボーンはツナに向かって飛び蹴りをお見舞していく。



「10代目ェ!?」

「いでえ!?何すんだよリボーン!!」

「いつまでぼけっと突っ立ってるつもりだ。オレらも帰るぞ」

「「「「「!」」」」」



リボーンの言葉にハッとなる一行。
すると葵は一歩前に出てくるっと振り返りながら皆に向かって笑いかけた。



「そうだね。帰ろっか」

「!」



たった一歩。
距離にして数メートルもあるかないか先にいるだけなのに、葵の姿が見えなくなってしまいそうな感覚にツナは襲われる。



「あ、待っ───…」

「葵〜ランボさん疲れたもんね〜」

「じゃあおぶってあげるから背中乗りな。イーピンやフゥ太は大丈夫?」

「僕は大丈夫だよ」

「(コクコク)」

「そっかそっか。帰ったら兄さんからもらったお菓子一緒に食べような」

「やったー!」



ランボたちに笑いかける葵の姿といつもの日常が重なる。
突然の刺客にボンゴレの家宝継承と非日常的な出来事が続いていたにも関わらず、変わらぬ日常が目の前に広がっているのを見てツナだけでなく獄寺たちも知らず知らずのうちに緊張していた心がほぐれていく。

少し前を歩いて手招きをする葵の笑顔につられてツナたちも笑みを零すとその背を追った。
その時にふと山本が呟く。



「未だに状況よくわかってねー部分けどよ…一つだけハッキリしてる。オレ、まだまだ皆と一緒に笑ってたいわ」

「!」

「呑気なこった。これだから野球バカは───」

「…………」



ふとツナの脳裏にはヴァリアーの面々が浮かぶ。
自分もこの日常を守りたいと思いつつ、同時に襲い来る不安でカタカタと震える手を見つめ眉をひそめながら言った。



「だけど…あいつらとんでもなく強そうだったよ。オレらに勝てんのかな…」

「“勝てるかな”じゃねーぞ。お前らは“勝たなくちゃいけない”んだ。じゃねーと…葵があいつらに連れてかれちまうぞ」

「!!」



リボーンの発言で葵の命運がこの勝負にかかっていることを再認識する。
リボーンの言うことはもっともで反論の余地すらない。
だがそれ以上に襲い来る不安にツナは俯きそうになった時だった。



「大丈夫だって…」

「え?」



思わずツナは顔を上げる。
するとそこにはいつものように笑う山本がいた。



「最初はオレ、自分がロン毛に勝つことしか考えてなくてさ。でもみんなが揃った時思ったんだ。オレだけじゃなくてオレたちの戦いだって…一人じゃねーんだぜツナ。みんなで勝とーぜ」

「や……山本……」

「っためーだ!!あんな奴らにボンゴレも…葵もまかせられるか!相手が誰だろうと蹴散らしてやりますよ!勝つのはオレたちです。任せてください10代目!!」



山本と獄寺の根拠のない盛り上がりにツナが巻き込まれていく。
いつものパターン、お決まりの光景だ、と内心ツナは思いつつも二人にそう言われると何とかなるような気がして、不思議とさっきまでの震えも止まっていた。



「沢田!俺もだぞ!奴らが何者なのかはわからんが極限負けん!勝ちに行くぞ!!」

「そこはわかれっての…芝生頭」

「なにー!タコヘッド!!」

「ちょっ二人ともストップストップ!!」



わちゃわちゃとしている後ろのツナたちを見ながら葵もくすりと笑みを浮かべる。

そして自分の右手につけた夜空のボンゴレリングに視線を落とす。
その間頭に浮かんでは消えてを繰り返すのはチェルベッロとのやりとり。



「不安か?」

「!」



気配を消しながら近づくリボーンにビクッと驚きを見せつつ葵は小さく笑う。
普段ならリボーンといえども微かな気配を悟ってこの様なリアクションを見せない葵を見るに、先程の出来事が余程衝撃的だったのだと安易に予想できる。

リボーンのそんな問いかけに葵は首を横に振った。



「今はもう大丈夫だよ。だってオレらには仲間がいるから」

「そーか」



迷いのない凛とした葵の姿にリボーンは嬉しそうにニッと笑う。



「……あとさ…どんな結果になっても皆を絶対に護るから」

「…………」






僕にとって君は、

暗い道の向こうでいつも僕を照らしてくれた。

まるで夜空で光を放つ“星”のように。






「(絶対に…なくしちゃいけない)」







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