◎ 夜空のボンゴレリング(2/5)
“命をかけて”という言葉に特にツナ側の面々は目を見開き驚きを隠せずいた。
ハーフボンゴレリンクの争奪戦に関してはこれでと言わんばかりにチェルベッロは話に一区切りをつけ、葵に視線を移す。
「また今回は初代以来の夜空のリングの後継者がいらっしゃいます」
「それは山下葵様でございます」
「!!」
チェルベッロのひとりが取り出したのは重厚感溢れる1つの黒い箱。
天面には金で作られたボンゴレのエンブレムがデザインされていた。
そしてその箱を見るや否や家光は眉間にしわを寄せるながら問いかけた。
「どこにあった!?なぜお前たちがそれを───」
「これは後継者が現れるまで我々が大切に保管していました」
「後継者が現れるときこのようにリングに炎が灯ります」
「!!」
チェルベッロが箱を開けるとその瞬間、中から白い炎が漏れ暗い辺りを照らしていく。
煌々と燃える炎は鮮やかでどこかキラキラしており、見るもの全ての心を奪うほど綺麗だった。
その炎を見た瞬間、葵は直感的に悟った。
このリングは自分を待っていたのだ、と。
困惑を隠せない葵の元にチェルベッロの二人は箱を持ったまま降り立つ。
そして膝を着くと箱を掲げて葵に中にあるリングを取るように促す。
「葵!無理しなくていいんだよ!?なんなら断ったって────」
「…………」
ツナの優しい言葉に葵は何故か首を振る。
少しだけ震える右手を自身の左手でしっかりと握りしめるとまるで自分に言い聞かせるように答えた。
「これは…オレが受け取らなくちゃいけない」
「え…?」
葵にとって初めて見るリング。
そのはずなのにどこか懐かしさを感じ、何故か泣きそうな感覚に苛まれ眉をひそめた。
グッと瞳を閉じた後、目を開く。
その目には決意が宿っており、葵はチェルベッロに促されるまま白い炎が灯ったリングへと手を伸ばす。
その炎に触れても特に熱くなく、なんなくリングに触れることが出来た。
そしてそれを右手の中指につけた時、炎はさらに大きくなると葵を包み込む。
「おい!?」
「なんだこれはー!!?」
「葵!?」
焦る獄寺達とは対照的に炎に包まれた葵
は熱いというよりも温かいという感覚に包まれる。
まるで幼い頃、母親に抱かれているようなそんな温かな感覚。
炎はすぐに収まり、リングに集まるように収束していくとまた辺りに暗闇が戻る。
「葵様の夜空のリングの継承はこちらで完了です」
「我々はあなたを待ってました」
そう告げるとチェルベッロの二人は膝を地面についたまま深々と頭を下げる。
なぜ自分がそんな敬われなければならないのかわからない葵は慌てながら顔を上げるように二人に声をかける。
そんないつもと変わらない葵を見てツナ達はほっと息をなでおろした。
だが問題はここから────
「夜空のボンゴレリングの継承者は葵様ただ一人」
「すなわち今回のリング争奪戦での勝者とともに葵様は時期ボンゴレファミリーのボンゴレリング継承者として今後は過ごしていただきます」
突拍子のない発言に葵も思わず目を見開く。
「ということは負けたら葵があいつらに連れてかれちゃうのー!?」
「うししし」
「あらあ〜いいんじゃない?むさい奴ばっかりで嫌だったのよお」
「葵なら戦力にもなるし大歓迎さ」
「うむ…」
「…………」
口々に言うヴァリアーの面々たちの中でも寡黙なXANXUSはともかく、スクアーロは珍しく口をつぐんでじっと葵のことを見つめていた。
「早速のリング争奪戦は明晩11時。場所は並盛中学校」
「皆さまお待ちしております。もちろん葵様もお越しください」
さようならとそう言い放つとチェルベッロの二人は制止の声も聞かずに立ち去ってしまう。
一瞬沈黙が訪れるがそれを断ち切ったのは以外な人物。
XANXUSは葵に目を向けると少し嬉しそうに小さく笑いながら言った。
「精々奴らとの最後の時間を楽しむんだな」
「XANXUS!」
そして隣にいたツナをギロっと睨みつける。
まるで虎のような鋭い視線にツナは背筋が凍るような感覚に襲われ、思わず地面へしゃがみこむ。
これからハーフボンゴレリングを、葵を巡り、夜の並中で激しい激闘が繰り広げられる。
それぞれはどんな思いを胸に進むのか。
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