◎ 君に必要なもの(6/6)
「悔しいが…とりあえずクリアだ!やるじゃん!」
「えへへ」
「でもまだ気は抜けねーぞ!昼飯食べてからもとっく────」
「兄さん!そこ!!!」
「ん?」
千李が一歩踏み出した瞬間、地面が崩れてそのまま下に落ちていく。
あちゃーと苦笑いを浮かべながら葵は落とし穴を覗き込みながら声をかけた。
「兄さん大丈夫!?」
「大丈夫だけどよ…どんだけ落とし穴あんだよ!?」
「あと……3つくらい?」
「いや多すぎだろ!!」
そんな二人の様子を物陰から見守るヘルメットを被りタンクトップを見にまとう一人の男の姿。
男は安心したように笑みを浮かべながら呟いた。
「倒せない敵なんていない。常に勝利を目指して貪欲になれば必ず道筋は見えて来る。落とし穴5つは多いが…諦めず策を練って挑んだその姿勢はきっとこれからも役立つはずだ。ここも大丈夫だな」
「もしものこと考えて念には念を…」
「限度ってもんがあるだろ。もしかして…朝早くからこれ一人で掘ってたのか!?」
「そうだけど…」
「……わかった!残りの期間でもうちょい賢い戦い方教えてやる!だからもうこんな無駄なことすんな!」
「む、無駄って!?」
兄妹のほっこりとしたやりとりに思わず男も笑みが溢れる。
そして空を見上げた。
「リングが偽物とわかるまでまだ時間はある。他もこの調子でいくといいがな…」
◇
場所は変わってイタリア。
「スクアーロが持ち帰ったハーフボンゴレリングにより、9代目の了承も得られそうです。時期ボンゴレボスの披露式典も近々開かれるでしょう。これでいよいよファミリーの実権は9代目の直系、実の息子であるボスのものですね。XANXUS様」
XANXUSと呼ばれた顔に傷跡のある男は無表情のまま椅子に座っていた。
そんなXANXUSに近づく一人の男。
「う゛お゛ぉい。お呼びかボス?」
相変わらず大きな声を出しながらスクアーロはXANXUSへと近づく。
日本からハーフボンゴレリングを取り戻すという任務を無事に完遂し、褒美がもらえるならありがたく頂戴すると心なしか嬉しそうに笑みを浮かべる彼の頭をXANXUSは無言で掴むとそのまま自身が座っていた椅子の肘置きに叩きつける。
唐突な暴行に流石のスクアーロも抗議を示すが、XANXUSは自身がつけていたリングの片割れ、スクアーロが持ち帰ってきたハーフボンゴレリングを指で軽々と潰しながら衝撃の言葉を放つ。
「偽物だ」
「!」
「家光…」
恨めしそうにそう一言呟くと入口へと歩みを進めた。
「どうせリングだけでは揃わなかったからちょうどいい。日本へ発つ」
XANXUSの言葉を聞いてその部屋の中にいたスクアーロ以外の5名も立ち上がるとXANXUSの後に続く。
「奴らを根絶やしにする」
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