◎ 君に必要なもの(3/5)
2日目の特訓を終え家に帰り、沢田家全員で食卓を囲んでいた。
心做しか元気がなさそうな葵に気づいていたツナは食後、葵の部屋を尋ねていた。
「疲れてるところごめんね。なんか元気なさそうだったから気になって…」
「ううん。大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「…………」
言葉ではそう言っているが何かあったのだと一緒にいるツナだからこそ気づいた。
だけど深く突っ込まない方が良いのかわからず悩んだ末、ツナは困ったように笑いながら言った。
「…オレさ、葵にはたくさん助けられてきたから…葵が悩んでる時に力になれたら嬉しいなって思ってるよ」
「!」
「まあ、オレじゃ頼りないかもしれないけど…
でも一人で悩むよりきっと良いよ。ほら!言うだけでもスッキリするって言うし!」
「ツナ………」
ツナの優しさに触れて不意に泣きそうになるのを堪え、ありがとうと葵は思いっきり笑いながら言った。
その表情を見てツナは顔を赤く染めて俯いた。
「じゃあ骸と戦った時のこと聞いても良い?」
「え、あ、うん!」
「あの時かなり追い込まれてたけど、ツナはどんなことを考えて骸に立ち向かっていったの?」
「あの時は───…」
ツナはうーんと考えながらぽつりぽつりと話し始める。
「あんな強い奴に勝てっこないって、これ以上痛い思いしたくない、戦いたくないって……正直思ってた」
だけど、と力強く言葉を紡ぐ。
「皆が操られたり傷つけられたりしてすごくムカついて……だから骸には負けたくない、絶対に勝ちたいって思ったかな」
「……」
「正直勝てる自信なんてなかったけど…それまで皆が戦ってくれて繋いできてくれたものをオレで終わらせたくなかった。あと、皆で並盛に戻ってまた笑い合いたくて……まさに死ぬ気でやるしかないって感じだったかな」
明らかに格上の敵と相対し、最後の手段として残されていたのはレオンから吐き出された手袋と新しい特殊弾。
どうなるかなんて誰もわからない状況下でもツナは諦めず最後まで立ち向かった結果、全員無事で今もこうして笑い会うことが出来た。
ツナの話を聞いて葵はツナに尊敬の眼差しを向けながら言った。
「……ツナは本当にすごいね」
「ええ!?(いやいや…オレからしたらなんでも出来る葵の方がすごいと思うけど…)」
「話聞けてよかった!ちょっとだけ見えてきたよ」
戦う前から勝てないと諦めてた。
自分の得意とする戦い方にかまけて選択肢を狭めていた。
きっとそれが今の自分の弱いところ。
「ツナ、ありがとう」
「!」
不安そうにしていた表情から何か突破口が見えたような清々しい表情へと変わっていく。
そんな葵を見て、ツナは安堵の息を吐き、無理しないでねと声をかけると部屋から出ていった。
ツナが部屋から出た後、葵は袋から銃を取り出す。
ずっしりと鉄の重厚感を感じる右手はどこか懐かしく昔の記憶が蘇る。
「(体術だけじゃ兄さんには勝てない。なら、ジェーンに教わった“これ”を使って…他にも何か使えるものは……)」
いろいろと試行錯誤し、戦いのシミュレーションを重ねていく。
そんな葵の様子を扉の隙間からリボーンは覗いたかと思うとニッと笑みを浮かべた。
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